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原子力発電の安全性

原子炉固有の自己制御性

 燃料の中に含まれるウラン235の原子核が新しい中性子を取り込むと原子核が分裂し、このとき大きなエネルギーと平均2〜3個のスピード の速い中性子を放出します。その中性子がまた別のウラン235を核分裂させていき、このようにして原子炉では大きな熱エネルギーを引き出しています。原子 核が分裂した際にできる中性子はスピードが速いため別のウラン235の原子核にあたりにくいのですが、日本の商業用原子炉(軽水炉)の冷却に使用されてい る水が中性子のスピードを遅くして連続的な核分裂を可能にしています。
 軽水炉は何かのはずみで出力が上昇しても、核分裂の連鎖反応が自然に抑制され、出力の上昇が抑えられます。このような特性を「自己抑制性」といいます。
 その一つが、出力が上昇すると水が蒸気になって密度が減り、中性子が減速されにくくなるため、核分裂を起こす遅い中性子が減少し、核分裂の連鎖反応が抑制されるボイド効果です。
 もう一つは出力が上昇すると燃料棒の温度が上昇し、核分裂を起こさないウラン238が中性子をたくさん吸収するようになるため、核分裂を起こすウラン235に吸収される中性子が減少し、核分裂の連鎖反応が抑制されるドップラー効果です。

安全対策の考え方

 原子力の持つ非常に大きなエネルギーは、平和かつ安全に使うことによって人類に役立つものとして有効に利用することができます。
 原子力発電は少量の燃料から多くのエネルギーを取り出すことができ、「原子力の平和利用」として最も有効なもののひとつです。
 同時に原子力発電自体は「潜在的な危険性」を持つことも忘れてはいけません。原子力の平和利用を進めていく上で、何よりも優先するのは安全の確保です。 そのためには、原子力のもつ力、性質を十分に認識し、それを人間の知恵と技術によってコントロールしていかなくてはなりません。
 原子力発電所では「多重防護」の考えを基本に、念には念を入れた安全対策が講じられています。加えて安全運転に万全を期するため「人間と機械の調和」に配慮し、機械面からだけでなく人間側にたった「ヒューマンファクター研究」への取り組みも行われています。