Up DNA 塩基配列の解読 (遺伝子解読,ゲノム解析) 作成: 2022-02-08
更新: 2022-02-09


    用語:
    「遺伝子配列」というときの「配列」は,DNA/RNA の塩基の配列のこと。
    生物X のこの配列を,Xの「ゲノム」と呼ぶ。
    そこで「遺伝子配列の解読」の作業は,「ゲノム解析のうちのゲノム配列解読」という位置づけになる。


      福岡伸一 :「遺伝子配列解読法」 から引用:
     遺伝子配列の解読は、現在では完全にオートメーション化されている。
    DNAシークエンサーという装置に、cDNAの反応液を注入すると、自動的にその解析結果がコンピューターに出力される。

    あるいは、今では研究者はその操作すら行っていない。
    cDNAを検査会社に郵送すると、数日後にデータがメールで届く。
    完全にアウトソーシングされているのだ。
    そしてその間に行われていることは完全にブラックボックス化している。

    だから、遺伝子配列の解読が、いったいいかなるプロセスで実行されているのか、ほとんどの研究者は気にしていない。
    学生たちに、遺伝子配列解析の原理を問うても、ちゃんと答えられるかどうかはなはだ疑問である。

    私たちがこの研究に取り組んでいる頃、すべては手作業でなされていた。
    遺伝子配列解読はかなり煩雑な段取りを必要とし、集中力がいる難作業であった。
    また、それが研究者の腕の見せどころでもあった。


    DNA塩基配列解読の方法(サンガー法)
    1. 原料
      • 解読したい DNA
      • DNA の単量体 (ヌクレオチド) dNTPs ──つぎの4種
          dATP (deoxy-Adenosine-Tri-Phosphate)
          dTTP (deoxy-Thymidine-Tri-Phosphate)
          dGTP (deoxy-Guanosine-Tri-Phosphate)
          dCTP (deoxy-Cytidine-Tri-Phosphate)
      • 異なる色素で標識した dNTPs のアナログ (ニセモノ──結合の腕が片方にしかない)
          ddATP-
          ddTTP-
          ddGTP-
          ddCTP-
      • 反応に必要な酵素やその他の試薬
    2. 反応
        DNA に熱をかけることによって、二重らせんをほどき、一本鎖のDNAにする。
        原料に含まれる酵素は、この一本鎖 DNAを鋳型とし、これと同じ配列のDNAを単量体の結合によって合成しようとする。
        このとき、誤ってアナログを連結してしまうと,そこで合成反応が停止する。
        結果的に様々な箇所で反応が停止し、停止箇所が色素標識された様々な長さのDNAが得られる。
    3. 検出
        反応産物が,長さの短い順に,検出器に到着する。
        反応物には色素がついているので,到着した順番が色の配列 (黒黒緑赤青黒…) に表される。
        これから,解読したい DNA の塩基配列がわかる (GGATCG…)。


    備考: