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宮原 (2014), pp.106,107.
木の分析を行う場合は、まずすべての年輸の正確な年代を決定します。
最初に、一番外側の年輪の年代を確認します。
伐採年がわからない場合は、炭素14の濃度を測定し、1964年の年輪に特徴的な濃度の増加を検出します。
これは、1963年に施行された部分的核実験禁止条約を前に相次いで行われた大気中での核実験によって、大量の中性子が大気中に放出され、それによって大量の炭素14がつくられ、濃度が急上昇したことによるものです。
条約の施行後は、地下核実験が主流になり、核実験による炭素14の生成は減少しました。
この1964年のピークを検出したあとは、顕徴鏡を用いて内側の年輸の層をひとつひとつ確認していきます。‥‥‥
[年代を特定した年輪に対し,炭素14の濃度を測定]
年代を特定した年輪は、カッターやミクロトーム (試料を薄く切るための器具) などを使って、1枚ごとに丁寧に剥離して、α -セルロースという成分を取り出します。
これは木の年輪の骨格のようなものです。
油脂などの成分は、年輪間を移動してしまう場合があって、年代ごとの情報が混ざってしまっている可能性があるので、セルロース以外の成分は薬品で洗浄してすべて除去します。
そして質量分析装置を使って炭素14や酸素18の濃度の分析を行います。
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同上 pp.111,112.
地層の年代を決める方法でよく用いられるのは、「放射性炭素年代測定法」です。
埋没木の年輪やサンゴ化石の年代を知りたい場合のほか、湖や海底の堆積物の地層ごとの年代を知りた
い場合に使われます。
湖の地層の場合は、もし葉や枝などの植物片が含まれていれば、放射性炭素年代測定法によってその層が何年前に堆積したものであるかを調べることができます。
放射性炭素年代測定法では、炭素14の濃度を測定することによって年代を調べます。‥‥‥
炭素14は宇宙線によってつくられます ‥‥‥
年輪に取り込まれたあとは、半減期5730年ごとに半分ずつに減っていきます。
時間が経てば経つほど濃度が下がっていくために、"タイマー" として使うことができるのです。
現在の大気中の濃度に比べて半分程度の濃度しかなかった場合には、木片が5730年前のものであることがわかります。
ややこしいのは、炭素比がいつも同じだけ生成されているわけではないという点です。
たとえば、太陽活動が低下していて宇宙線がたくさん地球に降り注ぎ炭素14が大量につくられていた場合には、5730年前の木であったとしても、見かけ上濃度が少し高くなり、時間があまり経過していないように見えてしまいます。
そうすると、5730年前よりも何十年か最近の木であるかのように見えてしまうのです。
ですから、正確な年代を決めたい場合には、単純に炭素14の濃度を測定するだけではなく、すでに年代がわかっている木 [上述] を使って炭素14の濃度をできるだけ古い時代まで連続的に調べておいて、そのデータとの比較によって年代を決めていく必要があります。
炭素14濃度の見本となるデータを作成する際には、いくつもの木のデータを年代ごとにつなげていきます。
木の年代は、地域ごとに年輪幅が同じような増減パターンを示すことを使った「年輪年代法」という手法で決めておきます。
炭素14年代測定法が使えるのはおよそ5万年ほど前までです。
それよりも古い年代の試料については別の方法を使わなければなりません。
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- 引用文献
- 宮原ひろ子 (2014) :『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』, 化学同人 (DOJIN選書), 2014.
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