- 動物細胞の核には全能性がある
- 卵母細胞
- 「クローニング成功」の内実
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更科 (2024), pp.230,231
ブカルドは絶滅してしまったが、冷凍した体細胞は残っている。
そこで、アルベルトは、ブカルドのクローンの作製にとりかかった。
まず、冷凍保存されていたブカルドの体細胞から細胞核を取り出した。
それから、あらかじめ核を取り除いておいた、ヤギの未授精卵に、ブカルドの細胞核を移植した。
こうして作られた胚を、代理母となるヤギの子宮に入れて成長させ、そして出産させたのである。
このようなクローン作製でいつも問題になるのは、成功率の低さだ。
クローン羊のドリーは、277個の未受精卵に核移植が行われた中で、唯一の成功例だった。
今回のブカルドの場合も、782個の未受精卵に核移植が行われたが、最終的に出産まで漕ぎ着けたのは1頭だけだった。
その1頭の出産に際して、代理母のヤギの帝王切開が行われた。
2003年の7月のことである。
そして、短い毛がびっしりと生えた、体長約50センチメートルのブカルドのメスの赤ちゃんが生まれた。
赤ちゃんを取り上げたのはアルベルトであった。
それは、3年前に死んだセリアのクローンであり、絶滅種が蘇った瞬間だった。
しかし、赤ちゃんは息をしていなかった。
人間もヤギも、子宮の中にいるときは、羊水の中で暮らしている。
つまり、水中にいるわけで、空気呼吸はしていないし、肺も使っていない。
しかし、生まれると空気呼吸をしなくてはいけない ‥‥‥
しかし、セリアのクローンは、いつまで経っても息をしなかった。そして、10分ほどで死んでしまった。‥‥‥
ブカルドの赤ちゃんを解剖してみると、肺が二つではなく三つあったことがわかった。‥‥‥
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- 参考ウェブサイト
- 参考文献
- Knoepfler, P. (2016) : GMO Sapiens ── The life-changing science of designer babies. World Scientific Publishing
- 中山潤一[訳]『デザイナー・ベビー ──ゲノム編集によって迫られる選択』, 丸善出版, 2017.
更科功『化石に眠るDNA 絶滅動物は復活するか』, 中央公論新社, 2024
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