Up 生命の起源は, 「確率」の論理で考えると間違う 作成: 2017-11-10
更新: 2017-11-10


    「生命の起源」の諸説のうちに,パンスペルミア (pan-spermia) 説というのがある:
      「 生命体──かくも驚異的なシステム──が出来上がるには,とてつもない時間を要する。
    地球誕生からの時間ではとても間に合わない。
    したがって,生命体は宇宙からやってきた。

    「とてつもない時間──地球誕生からの時間ではとても間に合わない」は,なにを論理にして出しているのか。
    高校数学の「確率・統計」の中に出てくる「組み合わせ」と「確率」である:
      「 生命体の生成を,素材の組み合わせの事象と見なそう。
    そして,この組み合わせが偶然に出来上がる確率に思いを致そう。
    その確率は,猿のデタラメなタイプでシェイクスピアの『ハムレット』が出来上がってしまう確率より低い。
    実際,はるかに低い。──なぜなら,素材の数がタイプ文字の数と比べものにならない,組み合わせの長さが『ハムレット』全体の長さと比べものにならない。


    このロジックは,「無限の猿定理 infinite monkey theorem」の無反省な適用 (逆用) ということになる。
    「無限の猿定理」は,類型がある。
    「等重率の仮定」「アプリオリ確率」「エルゴード仮説」がそうである。
    物理学では,これらを用いるのに慎重である。
    しかし,「生命の起源」説では,パンスペルミア説のように,安直に用いてしまう傾向がある。

    実際,このロジックを用いれば,現前はすべて有り得ないものになる。
    宇宙から来たものにしなくてはならない。


    シェークスピアは『ハムレット』を書いたが,もう一度書くとなったら書けない。
    <もう一度書く>は「組み合わせ・確率」の位相になるからである。
    現前は,「無限の猿定理」でできたものではない。
    現前は「偶然」だが,この「偶然」は「組み合わせ・確率」で計算するものではないのである。