Up 理論の検証 : 秋分の太陽 (2020-09-21) 作成: 2020-09-22
更新: 2020-10-25


    ロジックで導いた「太陽の挙動」が実際と合っているかどうかを見るため,2020-09-21 (「秋分の日」の前日) に,これを調べた。

    方法は,紙の上にアクリルの箱をのせ,直立した辺 (高さ 16 cm) の影の先端を,紙に鉛筆でマークしていくというもの:

    水平・垂直のチェックもしない雑駁なやり方であるが,つぎの結果を得た:

    この結果について,以下考察する。
    なお,「応用 : 秋分の太陽」で導いた諸命題を,この考察の随所で用いる。


    (1) 影の移動
    影の長さが最短になる南中は,記録図面では日本標準時で 11:20 頃。

    影の移動は,理論値ではつぎのようになる ( 日時計):
 時  南中との
経度差
南中時の影との
角度
6 -67 -74
7 -52 -62
8 -37 -48
9 -22 -31
10 -7 -10
11 8 12
12 23 32
13 38 49
14 53 63
15 68 75
16 83 85

    ここで時刻は,観測地の時刻である。
    観測地は日本標準時子午線の東にあり,標準時との時差が 29分。
    よって上の表は,標準時で書くとつぎのようになる:
 時  南中との
経度差
南中時の影との
角度
5:31 -67 -74
6:31 -52 -62
7:31 -37 -48
8:31 -22 -31
9:31 -7 -10
10:31 8 12
11:31 23 32
12:31 38 49
13:31 53 63
14:31 68 75
15:31 83 85

       考え方:
    当地時を \( T \) ,このときの標準時を \( T_0 \) とする。
    当地と同緯度の標準時地は t = 29分 後に,太陽に関する当地のいまの位相になるから, \[ \begin{align} & T_0 + t = T \\ \Longrightarrow \ & T_0 = T - t \end{align} \]

    そしてこれを記録図面に重ねてみると,つぎのようになる:


    時刻がほぼ1時間半ズレているが,これはつぎが理由である:
      生活で使っている時刻は「平均太陽時」。
      これは,本テクストで定義した「正午」による時刻とは違う。
    ここでは,1時間ごとの影の移動パターンが,理論値と観測値とでだいたい重なっていることを以て,「理論値と観測値はほぼ一致」と判定する。
    きっちり重ならないことについては,観測が雑であることが原因と見て,そのうち装置の精度を高くして再観測することを期す。


    (2) 影の長さ
    南中から経度差bのとき,太陽の仰角余角αは, \[ cos( \alpha ) = cos(a) cos(b) \] そして仰角余角αのとき,棒の影の長さは,棒の長さの tan(α) 倍。
    南中のときは,仰角余角が緯度aと等しいので,影の長さは 棒の長さの tan(a) 倍。


    これを計算すると,つぎのようになる (経度15度間隔は1時間間隔と対応している):
東経(度) α(度) 影の長さ(cm)
0 43 14.7
15 45 15.8
30 50 19.3
45 59 26.2
60 68 40.3
75 79 82.3

    観測値も,だいたいこのようになった。
    もっとも,観測での影の長さの最短が 13.5 cm というふうに,厳密には理論値との開きがある。
    ただし,影の先端はぼやけるので 5mm 幅の誤差は出る。水平・垂直の設定も行っていない。
    そのうち,装置の精度を高くして再観測することを期す。


    (3) 影の先端の軌跡が直線?
    一般にはこうならない。
    夏至を考えればわかる──夏至には真東・真西で太陽が上空にあり,このとき棒の影がそれぞれ棒の真西と真東に現れる。
    影の軌跡が直線になるのは,秋分に理由があるということになる。

    そしてもし理由づけられるとすれば,それはつぎが成り立っているということである:
\( tan( \alpha )\ cos( \beta ) = tan( a ) \)

    さて,実際はどうなのか?
    以下,推論する。


    つぎのようにベクトルを定める:

    棒の長さを1とすると,つぎの長さの関係になる:

    このとき \[ \begin{align} cos(b) &= \frac{ {\bf t}_b \cdot {\bf t}_0 }{ | {\bf t}_b | \ | {\bf t}_0 | } \\ \ \\ &= \frac{ ( {\bf s}_b - {\bf e} ) \cdot ( {\bf s}_0 - {\bf e} ) }{ | {\bf t}_b | \ | {\bf t}_0 | } \\ \ \\ &= \frac{ {\bf s}_b \cdot {\bf s}_0 - {\bf s}_b \cdot {\bf e}_0 - {\bf e} \cdot {\bf s}_0 + {\bf e} \cdot {\bf e} } { \sqrt{ 1 + (tan(\alpha))^2 } \ \sqrt{ 1 + (tan(a))^2 } } \\ \ \\ &= \frac{ |{\bf s}_b| |{\bf s}_0| cos(\beta ) - 0 - 0 + 1 } { \sqrt{ \frac{1}{ (cos(\alpha))^2 }} \sqrt{\frac{1}{ (cos(a))^2 }} } \\ \ \\ &= ( tan(\alpha) tan(a) cos(\beta ) + 1 ) cos(\alpha) cos(a) \\ &= sin(\alpha) sin(a) cos(\beta ) + cos(\alpha) cos(a) \\ &= sin(\alpha) sin(a) cos(\beta ) + ( cos(a) cos(b) ) cos(a) \end{align} \\ \] よって, \[ \begin{align} cos(\beta) &= \frac{ cos(b) - ( cos(a) )^2 cos(b) }{ sin(\alpha) sin(a)} = \frac{ ( sin(a) )^2 cos(b) }{ sin(\alpha) sin(a)} \\ &= \frac{ sin(a) cos(b) }{ sin(\alpha)} \end{align} \\ \] \[ \begin{align} tan(\alpha) cos(\beta) &= \frac{ sin(a) cos(b) } { cos(\alpha) } = \frac{ sin(a) cos(b)}{ cos(a) cos(b) } = \frac{ sin(a)}{ cos(a) } \\ &= tan(a) \end{align} \\ \] 所期の結果となった!


    (4) 影の先端の移動速度
    上の推論の中で,つぎが導かれた:
      同緯度において,<南中から経度bのところ>で見る影は,南中のときに見る影と,つぎの角度βをなす: \[ cos(\beta) = \frac{ sin(a) cos(b) }{ \sqrt{ 1 - (cos(a) cos(b))^2 } } \\ \]
    そこで,経度bに対する影の移動が,つぎの式で求まる: \[ tan(a) tan(\beta) \]

    tan(a) tan(β) を計算すると: \[ (sin(\beta))^2 = 1 - (cos(\beta))^2 \\ \quad = 1 - \frac{ (sin(a))^2 (cos(b))^2 }{1 - (cos(a) cos(b))^2 } \\ \quad = \frac{1 - (cos(a) cos(b))^2 - (sin(a))^2 (cos(b))^2 }{1 - (cos(a) cos(b))^2 } \\ \quad = \frac{ 1 - (cos(b))^2 }{1 - (cos(a) cos(b))^2 } \\ \quad = \frac{ (sin(b))^2 }{1 - (cos(a) cos(b))^2 } \\ \ \\ \Longrightarrow \ \ tan(β) = \frac{ sin(b) }{ sin(a) cos(b) } \\ \ \\ \Longrightarrow \ \ tan(a) tan(\beta) = tan(a) \frac{ sin(b) }{ sin(a) cos(b) } = \frac{ sin(b) }{ cos(a) cos(b) } \]

    「南中からn時間経過」は「南中から経度 15×n度移動」になる。
    棒の長さ16cm に対して,南中の時からの影の移動を計算すると:
東経(度) 太陽の方角(度) 太陽の仰角(度) 影の移動(cm)
0 0 47 0
15 22 45 5.8
30 41 40 12.5
45 56 31 21.7
60 69 22 37.6
75 80 11 81

    実験値をこれと比べると,ほぼピッタリ合っている。
    よって,これまでの理論構築 (論理計算) は妥当であると結論できる。