Up | 「春眠不覚暁」 | 作成: 2020-10-11 更新: 2021-11-08 |
日中の時間が長くなるのは冬至から夏至にかけてであるが,冬至から春分までは日の出の遅い日が続く。
「春眠不覚暁」の感慨は,「まだ暗いなあ」である。 まだ暗いから,布団の中なのである。 そして,まだ暗い中で鳴き始めている鳥の声を聞いたり,そういえば夜間に風雨があったけど花がだいぶ落ちたんじゃないかなあと思ったりしているわけである。 この詩の「春」は,現代人の謂う「暦の上の春」である。 昔は,現代人の謂う「暦の上の春」が正真正銘の「春」。 それは春分 (3月20日頃) の前後1.5か月の期間。 即ち,2月5日頃から5月5日頃までが「春」である。 朝の頃合いなのに外がまだ暗いということで,詠っている時期は,2月上旬から3月のはじめくらいだろう。 詠っている「季節」が捉えられないと,この詩はとんでもない解釈を捻り出してしまうことになる。 それが「春眠は気持ちが良いから朝寝坊をしてしまう」である。 そして,誤った通念である「鳥は夜が明けてから鳴き出す」が,この解釈を後押しするというわけである。 ──実際は,鳥は暗いうちから鳴き出す。 「春眠不覚暁」は,命題として述べられている。 「朝寝坊」の解釈だと,春はいつも朝寝坊していなければならなくなる。 しかし困ったことに,世の中に流布している解釈は,この誤った解釈の方なのである。 古典の解釈を教条的に教える学校教育に馴らされた者は,「春眠は気持ちが良い」に共感できないのは知性・感性に劣ることだと思い,「春眠って格別のものかよ?」の疑問を自ら封じるのである。 |