Up | 「春眠不覚暁」 | 作成: 2020-10-11 更新: 2020-10-12 |
「春眠不覚暁」は,「秋の日は釣瓶落し」の逆を言ったものである。 春は,時刻に対して夜明けが遅い。 冬至から春へは日中時間が長くなるが,それは日入が遅くなる方に現れて,日出の時刻は却って遅くなるのである。──日出が最も遅いのは,冬至と春分のちょうど真ん中の時。
「春眠不覚暁」の感慨は,「まだ暗いなあ」である。 まだ暗いから,布団の中なのである。 そして,まだ暗い中で鳴き始めている鳥の声を聞いたり,そういえば夜間に風雨があったけど花がだいぶ落ちたんじゃないかなあと思ったりしているわけである。 「季節」が捉えられないと,この詩はとんでもない解釈を捻り出してしまうことになる。 それが「春眠は気持ちが良いから朝寝坊をしてしまう」である。 そして,誤った通念である「鳥は夜が明けてから鳴き出す」が,この解釈を後押しするというわけである。 「春眠不覚暁」は,命題として述べられている。 「朝寝坊」の解釈だと,春はいつも朝寝坊していなければならなくなる。 しかし困ったことに,世の中に流布している解釈は,この誤った解釈の方なのである。 古典の解釈を教条的に教える学校教育に馴らされた者は,「春眠は気持ちが良い」に共感できないのは知性・感性に劣ることだと思い,「春眠って格別のものかよ?」の疑問を自ら封じるのである。 |