Up ミスリーディング :「移動・航海 作成: 2016-06-20
更新: 2017-06-15


    ホモサピエンスの「拡散」は,「移動」ではない。
    「移動」のことばを使う者は,<万年>単位の時間の長さを考えられない者ということになる。
    <1万年>は,年平均1km の拡散が1万km (地球 1/4 周) の拡散になる時間である。
    「年平均1km の拡散」などは,狩猟採集生活者ならあたりまえである──実際,小さ過ぎる値である。

    「拡散」は,個の日常生活の累積である。
    個の移動の累積ではない。


    海を経る「拡散」は,「航海」ではない。
    漁猟生活は,沖を漁場に開拓していくものになる。
    実際,日々の経験は,よい舟をつくり,潮や気象・天体を読む能力を形成する。
    時間はかかるが,<千年>単位の時間なら十分である。
    ここで,自分の住む島Aの向こうに島Bが見えているとしよう。
    AとBの真ん中くらいまで舟を出せるようになると,Aに戻るかわりに,Bまで行ってそこで泊まることを考えるようになる。
    「番屋」をつくって漁の一拠点にするというぐあいになる。
    そしてBが住むによいところであれば,Bに住む者がでてくる。
    こんなぐあいにして,ホモサピエンスの「拡散」は,海を経る形でも起こる。

    海を経る「拡散」に,「漂流」だとか「冒険」を考えるのはナンセンスである。
    海を経る「拡散」も,日常生活の累積である。
    「航海」の成功物語ではない。


    要点:<千年><万年>単位の長さの時間を,思慮できること。