Up 人類の繁栄 作成: 2024-07-18
更新: 2024-07-18


      更科 (2024), pp.213,214 から引用:
    地球上には、さまざまな生物がいる。
    数で測れば、細菌が一番多いだろうが、質量で測った場合、もっとも多いのは植物らしい。
    人工衛星からのデータやゲノムデータを使った推定によると、地球に生息する生物の総質量のおよそ80パーセントは植物が占めるという。
    ちなみに、生物体における炭素の質量で見積もった場合、生物の総重量は約550ギガトン (1ギガトンは10億トン) で、そのうち植物は約450ギガトン、細菌は約70ギガトン、動物は 約2ギガトンだ。
    私たちヒトは 0,06ギガトンなので、それほど多くない気もする。
    しかし、そんなことはない。
    野生の哺乳類をすべて合わせても 0.007ギガトン程度なので、私たちヒトはたった1種で、野生の全哺乳類の9倍近くに達しているのだ。
    また、家畜は野生の哺乳類より多いだけでなく、ヒトよりもさらに多くなっている。
    つまり、今、地球上で生きている哺乳類のほとんどはヒトと家畜であって、野生の哺乳類は数パーセントしかいないのである。
    これは鳥類でも同じようなもので、たとえば現在飼育されているニワトリの質量は、野生のすべての鳥類を合わせた質量の3倍ぐらいになっている。
    地球上で、哺乳類や鳥類が棲める場所は限られている。
    細菌のように地下深くに棲むことはできないし、植物に頼って生きている以上、あまり植物の生息場所を奪うわけにもいかな い。
    ところが、この1万年ほどのあいだにヒトが急速に増えて、さらにそれを上回る勢いで家畜が増えた。
    これでは、野生の哺乳類や鳥類 (やその他の生物) の生息場所が減るのは当たり前だ。
    そして、生息場所が減れば、多くの種が絶滅していくのが当たり前だ。
    10万年前に比べると、野生哺乳類の質量は6分の1に減っていると推定されている。

Bar-On (2018) から引用:
数値の単位:ギガトン


    一方,ひとはこの「人類の繁栄」にまだ満足していない。

      日本経済新聞, 2023-04-07
    エゾシカ急増で被害深刻 北海道、農業や交通事故
    北海道でエゾシカが原因の農作物の食害や交通事故が深刻化している。保護政策やハンター減少で、明治期に絶滅の危機にあった個体数が急増したことが一因だ。道は「増えすぎたシカ」の駆除を推進するが、死骸などが不法投棄される問題が発生。駆除を担うハンターからは行政の対応に不満の声が漏れる。
    道によると、エゾシカは1990年代から急増し、2010年度から対策を強化。推定生息数は11年度の77万頭をピークに減少傾向だったが、ここ数年で再び増加に転じた。21年度の野生鳥獣による道の農林水産業への被害額は54億5千万円で、シカは8割超の約44億8千万円を占めた。‥‥‥
    エゾシカ猟は期間や場所を限定した狩猟に加え、自治体の依頼で行われ、報酬も支払われる「許可捕獲」がある。21年度は許可捕獲だけで約11万頭が駆除され、道の担当者は「成果が出ている」と話す。‥‥‥

    読売新聞, 2024-04-26



  • 引用文献
    • 更科功 (2024) :『化石に眠るDNA 絶滅動物は復活するか』, 中央公論新社, 2024
    • Bar-On,Y.M. et al. (2018) : The biomass distribution on Earth
        Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jun 19; 115(25): 6506-6511.