rotation は,ベクトル場一般に適用される概念である。
電磁気学はいろいろなベクトル場を考えることになり,rotation はその各ベクトル場に対し適用され得るものになる。
ここでは,rotation の意味を,\( rot\,\vec{E} \) の場合で説明する。
\( rot\,\vec{E} \) の大意は,つぎのようになる:
「電場 \( \vec{E} \) の中で単位電荷が輪を描いて一周するときの,
ポテンシャルの損得」
そして,この大意を厳密化していって,\( rot\,\vec{E} \) の定義となる。
rotation の概念は,わかりにくい。
わかりにくいのは,つぎの二点による:
- ベクトル量であること
- <単位面積ベクトル>あたり量であること
一周の長さに依存するのではなく,一周で囲む面積に依存する
即ち,\( rot\,\vec{E} \) は,つぎのように定義される:
\[ rot \, \vec{E} = \left(
\frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y }, \,
\frac{ \partial E_z }{ \partial x } - \frac{ \partial E_x }{ \partial z }, \,
\frac{ \partial E_x }{ \partial y } - \frac{ \partial E_y }{ \partial x }
\right) \]
そして,つぎがこれの用い方になる:
\[ \int_S rot \, \vec{E} \cdot \vec{n} \, dS \]
以下,この概念がつくられるロジックを見ていく。
電場 \( \vec{E} (\vec{x}) \) の中の微小面積 \( dS \) を考える:
単位電荷が \( dS \) の縁を一周するときの仕事を,\( dW \) とする。
そして「単位面積あたりの仕事」に \( dW \) を換算したものを,\( W \) とする。
\( dS \) を,yz平面,zx平面,xy平面それぞれに射影する:
\( dS_x \) : yz平面への射影
\( dS_y \) : zx平面への射影
\( dS_z \) : xy平面への射影
仕事 \( dW_x, \,dW_y, \,dW_z \) をつぎのように定める:
\( dW_x \) : 単位電荷が \( dS_x \) の縁を一周するときの仕事
\( dW_y \) : 単位電荷が \( dS_y \) の縁を一周するときの仕事
\( dW_z \) : 単位電荷が \( dS_z \) の縁を一周するときの仕事
\( dW_x, \,dW_y, \,dW_z \) をそれぞれ「単位面積あたりの仕事」に換算したものを,\( W_x, \,W_y, \,W_z \) とする。
このとき,\( W \) はベクトル \( (W_x, \,W_y, \,W_z) \) の大きさと等しい。
以下,\( (W_x, \,W_y, \,W_z) \) を求める。
\( W_x \) の場合:
はじめに,\( dS_x \) が長方形の場合を考える:
このとき,
\( dW_x = E_y(y, z) \Delta y \\
+ E_z(y+ \Delta y, z) \Delta z \\
- E_y(y, z+ \Delta z) \Delta y \\
- E_y(y, z) \Delta z \\
= ( E_y(y, z) - E_y(y, z+ \Delta z)) \Delta y
- ( E_z(y, z) - E_y(y+ \Delta y, z)) \Delta z \\
\approx ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } \Delta z ) \Delta y
- ( \frac{ \partial E_z }{ \partial y } \Delta y )\Delta z \\
= ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \Delta y \Delta z \\
= ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \, dS_x \)
\( dS_x \) の一般形に対しては,つぎの区分求積を考える:
区分した長方形の辺長を \( \Delta y_1, \Delta z_1 \) とし,これの一周の仕事を \( dW_{x1} \) とする。
重なる辺で仕事が相殺されるので,つぎが成り立つ:
\( dW_x \approx \sum \, dW_{x1} \)
さらに,
\( \sum \, dW_{x1} = \sum \, ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \Delta y_1 \Delta z_1 =
( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \sum \, \Delta y_1 \Delta z_1 \\
\approx ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \, dS_x
\)
結局,
\( dW_x = ( \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } ) \, dS_x \)
\( dW_x \) は面積 \( dS_x \) あたりの仕事なので,
\( W_x = \frac{ dW_x }{ dS_x } = \frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y } \)
\( W_x \) の計算と同様に, \( W_y, \,W_z \) を計算する。
結果は,つぎのようになる:
\[ (W_x, \,W_y, \,W_z ) = \left(
\frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y }, \,
\frac{ \partial E_z }{ \partial x } - \frac{ \partial E_x }{ \partial z }, \,
\frac{ \partial E_x }{ \partial y } - \frac{ \partial E_y }{ \partial x }
\right) \]
この式の右辺を,\( rot \, \vec{E} \) と表す:
\[ rot \, \vec{E} = \left(
\frac{ \partial E_y }{ \partial z } - \frac{ \partial E_z }{ \partial y }, \,
\frac{ \partial E_z }{ \partial x } - \frac{ \partial E_x }{ \partial z }, \,
\frac{ \partial E_x }{ \partial y } - \frac{ \partial E_y }{ \partial x }
\right) \]
演算子記号 \( \nabla = ( \frac{ \partial }{ \partial x} , \frac{ \partial }{ \partial y} , \frac{ \partial }{ \partial z} ) \) を用いれば,形式的に \( \vec{E} = (E_x, \,E_y, \,E_z) \) との外積ということになる:
\[ rot \, \vec{E} = \nabla \times \vec{E} \]
註: |
ストークスの定理
\[ \oint \vec{E} \cdot d\vec{s} = \int rot \vec{E} \cdot \vec{n}\,dS \]
の右辺の面積分 \( \int rot \, \vec{E} \cdot \vec{n} \, dS \) は,つぎが「\( rot \, \vec{E} \cdot \vec{n} \, dS \)」の絵になる:
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