「重力場」の語の用い方は,「場」の理論が整理されるより前の慣行を引き摺らねばならない面もあり,整合していない。
ここでは,整合的な言い方を示す。
(1) 一つの質量がつくる重力場
位置 \( \vec{a} \) に置かれた質量 \( M \) がつくる重力場は,つぎの関数になる:
\[ \phi \ :\ \vec{x} \,\longmapsto\, - G \frac{M}{ | \vec{x} - \vec{a} | } \]
\( \phi (\vec{x}) \) は,「\( \vec{x} \) における重力ポテンシャル」と呼ばれる。
\( \vec{x} \) に質量を置くと,力 (ベクトル) を生じる。
力の大きさは,質量の大きさに比例する。
\( \vec{x} \) に単位質量を置いたときに生じる力 \( \vec{g}(\vec{x}) \) は,\( - grad\, \phi (\vec{x}) \) である。
\( \vec{g}(\vec{x}) \) を「\( \vec{x} \) における重力」と呼ぶ。
これは,つぎのようになる:
\[ \vec{g} (\vec{x}) \,=\, - G \frac{M}{ | \vec{x} - \vec{a} |^2 } \vec{e}_{\vec{x} - \vec{a}}
\,\left( =\, G \frac{M}{ | \vec{x} - \vec{a} | } \vec{e}_{\vec{a} - \vec{x}} \right) \]
重力場に対する「力ベクトル場」の見方は,関数 \( \vec{g} \) がこれに当たる。
(2) 複数の質量がつくる重力場
重力場については,重ね合わせが成り立つ。
即ち,位置 \( \vec{a_i} \) に置かれた質量 \( M_i \) がつくる重力場を \( \phi_i \) とするとき,関数
\[ \phi \,=\,\sum_{i} \phi_i \ :\ \vec{x} \, \longmapsto\, \sum_{i} \phi_i (\vec{x})
\]
がそのまま,これらを合わせた重力場になる。
つまり,つぎが成り立つ:
( \( \phi \) での重力ポテンシャル) = \( \sum_{i} \) ( \(\phi_i \) での重力ポテンシャル)
\[ \phi (\vec{x}) \,=\, \sum_{i} \phi_i (\vec{x}) \]
( \( \phi\) での重力) = \( \sum_{i}\) ( \( \phi_i\) での重力)
\[ \vec{g}(\vec{x}) \,=\, \sum_{i} \vec{g}_i (\vec{x}) \]
ここで,\( \vec{g}(\vec{x}),\, \vec{g}_i (\vec{x}) \) は,それぞれ \( - grad\, \phi (\vec{x}),\, - grad\, \phi_i (\vec{x}) \)
(1) より,
\[ \phi (\vec{x})
\,=\, - \sum_{i} G \frac{ M_i }{ | \vec{x} - \vec{a}_i | } \\
\vec{g}( \vec{x} )
\,=\, - \sum_{i} G \frac{ M_i }{ | \vec{x} - \vec{a}_i |^2 } \vec{e}_{\vec{x} - \vec{a}_i}
\,\left( =\, \sum_{i} G \frac{ M_i }{ | \vec{x} - \vec{a}_i |^2 } \vec{e}_{\vec{a}_i - \vec{x}} \right)
\]
(3) 連続した質量がつくる重力場
空間の中の領域 \( V \) に,質量が連続的に分布しており,位置 \( \vec{a} \in V \) における質量密度 (単位体積当たりの質量) が \( \rho (\vec{a}) \) であるとする。
このとき,つぎの関数 \( \phi \) が,これら質量がつくる重力場になる:
\[ \phi \ :\ \vec{x} \, \longmapsto\, - \int_V G \frac{ \rho (\vec{a}) }{ | \vec{x} - \vec{a} | } \,d\vec{a}
\]
そして \( \vec{x} \) における重力 \( \vec{g}( \vec{x} ) \, ( \,=\, - grad\, \phi (\vec{x}) \,) \) は,つぎのようになる:
\[ \vec{g}( \vec{x} ) \,=\, - \int_V G \frac{ \rho (\vec{a}) }{ | \vec{x} - \vec{a} |^2 } \, \vec{e}_{\vec{x} - \vec{a}} \, d\vec{a}
\,\left( =\, \int_V G \frac{ \rho (\vec{a}) }{ | \vec{x} - \vec{a} |^2 } \, \vec{e}_{\vec{a} - \vec{x}} \,d\vec{a} \right)
\]
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