Up 存在論 作成: 2021-09-06
更新: 2021-09-06


      Hossenfelder (2018), p.57
     ‥‥ 分解能のレベルごとに独特の言語、つまりそのレベルを理解するのに最も役立つ形式が存在する。
    このように、分解能に依存して対象物として現れてくる事象とその性質について、物理学者は「創発的」であると言う。
    また、短距離における理論を長距離におけるそれに関連付ける過程を「粗視化」と呼ぶ。

     この場合、「創発的 (emergent)」は「基本的 (fundamental)」の反意語だ。
    「基本的」とは、それ以上分解できず、何らかのより精密な理論からその性質が導き出されるのではない対象物を指して言う言葉だ。
    何が基本的かは、知識の状況によって変わる。
    今日基本的なものが、明日はもはや基本的ではないこともあり得る。
    だが、創発的なものは創発的であり続ける。

     物質は分子からなり、分子は原子からなり、原子は標準模型の素粒子からできている。
    標準模型の素粒子に空間と時間を加えたものは、現在私たちが知る限りにおいては、基本的なものだ──ほかの何ものからもできていない。
    基礎物理学の分野では、それよりさらに基本的なものが存在しないかどうかを明らかにしようとしている。



  • 引用文献
    • Hossenfelder, Sabine (2018)
       Lost in Math : How Beauty Leads Physics Astray
      • Basic Books, 2018.
      • 吉田 三知世 [訳]『数学に魅せられて、科学を見失う──物理学と「美しさ」の罠』, みすず書房, 2021.