Up ゲージ対称性 作成: 2019-04-14
更新: 2023-04-25


      Hossenfelder (2018), pp.65-68
     標準模型は「ゲージ対称性」という原理に基づいている。
    この原理によれば、すべての粒子は内部空間にひとつの方向を持っている。
    方位磁針の針とよく似ているが、粒子の内部空間の針は、あなたが見ることのできるどんな方向も向いていない。
     「内部空間って、いったい何だ?」と、あなたは訊くだろう。いい質問だ。私にできる最善の答えは、「便利なもの」だ。
    内部空間は、観測された粒子の振舞いを定量化するために考案されたもので、理論物理学者が予測をするのを助けてくれる数学的ツールである。‥‥
     そのようなわけで、どの粒子も、この便利な内部空間のなかにひとつの方向を持っている。
    すると、物理学者がゲージ対称性と呼ぶものからの要請がかかる。
    この空間に私たちがどのようなかたちで方向や位置をしるしづけるかに、自然法則が依存してはならないという要請が。‥‥
     自然の法則が対称性の要請を満たすのは容易ではない。
    内部空間の回転が、瞬間ごとに、あるいは、場所ごとに異なる可能性があり、しかもそのことも粒子を支配する法則に影響を及ぼしてはならないことが、事態をきわめて複雑にしている。
    対称性によるこの要請を数学的な形式に表すと、粒子がいかに振舞うべきかが、それによって完全に決定されてしまうことがわかる
    対称性に従う粒子どうしの相互作用は、別の粒子によって媒介され、こちらの粒子の性質は、関与する対称性の種類によって決まる。
    この相互作用を媒介する粒子は、ゲージ粒子と呼ばれるボソンである。‥‥
    要するに、ある特定の対称性を維持する (ゲージ対称性の制約下にある) 理論を構築したいのなら、対称性を尊重する粒子どうしの相互作用は、必ずある特定の種類のものでなければならないということだ。
    そのうえ、対称性からの要請により、必然的に、力を媒介するゲージ粒子が必要になる。 標準模型の根底には、このようなタイプのゲージ対称性が存在するのである。
     注目すべきことに標準模型は、ほとんどこのような対称性の原理だけで機能している
    標準模型は、
       電磁力を
       強い核力 (電気的斥力に対抗して原子核を一体に保つ力) と
       弱い核力 (原子核の崩壊を司る力)
    に結びつける。
    これら三つの相互作用に対し、三つのゲージ対称性が存在し、すべての粒子は、対称性がそれらにいかに働くかによって分類されている。‥‥
    すべてのものはたった25種類の粒子によってできているというが、それらの粒子の大部分が私たちには見えないのなら、どうしてそんなことが信じられるのか?
     答えはごく単純だ。
    私たちが、この数学を使って実験の結果を計算すると、これらの計算は、観測値を正確に記述している。
    理論とはこのように機能する。‥‥
    重要なのは、数学が正しい結果を予測することだけだ。