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Hossenfelder (2018), pp.31,32
物理学者にとって対称性は、不要な繰り返しを避ける組織化原理である。
パターン、類似性、秩序は、どのような種類のものでも、対称性の表れとして数学的に把握することができる。
対称性の存在はつねに、冗長性を明らかにし、単純化を可能にする。
つまり、対称性は、より少ないものでより多くを説明する。
たとえば、今日の空は西も青い、東も青い、北も、南も、南西も ‥‥‥ と言う代わりに、どの方角を見ても青いと言うことができる。
このような方向非依存性は、回転対称性の一つだ。
回転対称性が成り立っているときには、ひとつの方向で系がどう見えるかを述べ、続いて、ほかのすべての方向でもそうだと言えば十分である。
メリットは、言葉数が、あるいは物理の理論においては数式の数が、より少なくて済むことだ。
物理学者が扱う対称性は、この単純な例をより抽象化したようなもので、たとえば数学的な内部空間における複数の軸の回転対称性などである。
だが、手順はいつも同じだ。
自然法則が変わらないような変換を見つけたなら、あなたは対称性をひとつ発見したことになる。
そのような対称変換は、明確な手順として書き下すことのできる任意の操作であり得る──並進移動、回転、反転、そのほか、あなたが思いつくどんな操作でもいい。
その操作が、自然法則に何の変化ももたらさないなら、あなたは対称性を発見したわけである。
これによってあなたは、その操作がもたらす変化を説明する手間から解放され、変化はないと述べれば済む。
マッハの一言う「思考の経済」だ。
物理学では多数の異なるタイプの対称性の概念が使われているが、それらには一つの共通点がある──対称性は、強力な統一原理となり得る。
なぜなら、ある場合には非常に異なって見えるものどうしが、じつは対称変換によって結びついて同じ一つの属性で括れることを示すものだからだ。
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- 引用文献
- Hossenfelder, Sabine (2018)
Lost in Math : How Beauty Leads Physics Astray
- Basic Books, 2018.
- 吉田 三知世 [訳]『数学に魅せられて、科学を見失う──物理学と「美しさ」の罠』, みすず書房, 2021.
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