Up ミンコフスキー空間 作成: 2017-12-05
更新: 2017-12-05


    「光速は観測者に依らない」が導く宇宙・世界観を,数学にしようとする。
    そして出来たのが,「ミンコフスキー空間」である。

    この文脈により,ミンコフスキー空間はつぎの要件を満たすようにつくられるものになる:
    1. 座標変換は,ローレンツ変換
    2. 内積は,ローレンツ変換で不変な内積

    この要件から導かれた内積が,つぎのものである:
      \[ \left( \begin{array}{c} c\,t_a \\ x_a \\ y_a \\ z_a \\ \end{array} \right) \cdot \left( \begin{array}{c} c\,t_a \\ x_b \\ y_b \\ z_b \\ \end{array} \right) \ \ =\ \ \begin{array}{c} t \\ \\ \\ \\ \end{array} \left( \begin{array}{c} c\,t_a \\ x_a \\ y_a \\ z_a \\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{cccc} -1 & & & \\ & 1 & & \\ & & 1 & \\ & & & 1 \\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} c\,t_b \\ x_b \\ y_b \\ z_b \\ \end{array} \right) \\ \, \\ \ \ \ \ \ \ = - c^2\,t_a t_b + x_a x_b + y_a y_b + z_a z_b \]

    そしてこの内積を用いて,ベクトルの大きさ及び二点間の距離を定義する:
    • ベクトル \( \bf a \) に対し,
        \[ | \ {\bf a} | \,=\, \sqrt{ {\bf a} \cdot {\bf a} } \,=\, \sqrt{ - c^2\,t^2 + x^2 + y^2 + z^2 } \]
    • 二点A,Bに対し,
        \[ \overline{AB} \,=\, | \vec{AB} | \]


    この定義では,つぎの場合に \( | \bf{a} | \) が定義されない:
      \[ - c^2\,t^2 + x^2 + y^2 + z^2 \,\ < \, 0 \]
    しかしこれは,以下に示すように,不都合とはならない。


    ct-xyz 座標を,原点を「いま・ここ」にとる。
    そして,「いま・ここ」から見える世界を書き込む──図中の青色で表した円錐面 (図では断面の線) が,これである:

図は,ct - x 面を描いている    
──この面と垂直にy軸とz軸がある

    「いま・ここ」に届いている光を発した物質は(かつ)てこの円錐面上に存在したものであり,曾てこの円錐面上に存在した物質が「いま・ここ」から見えている。
    よってこの円錐面が,「いま・ここ」から見える世界である。

    《物質Mからの光が「いま・ここ」に届いている》は,作図的に,2つ,且つ2つのみ,ある。
    過去からのものが一つと,未来からのものが一つである。
    Mは,この場合の<Mの過去>と<Mの未来>の間に存在するものとして思念される。 ──実際,Mは<Mの過去>の前には存在していなかったかも知れないし,<Mの未来>の先には存在していないかも知れない。
    そして,「<Mの過去>と<Mの未来>の間」は,つぎの領域にある:
      \[ - c^2\,t^2 + x^2 + y^2 + z^2 \,\ \geqq \, 0 \]
    そしてこの領域は,ベクトルの大きさの定義が成る領域と同じである。


    これが「ミンコフスキー空間」である。
    ここでは空間が4次元のところを2次元で描いてきたが,3次元的に表現しようとするとつぎの絵になる:
Wikipedia (「ミンコフスキー空間」) より引用


    ミンコフスキー空間は,「時間」を「空間」と同じに見せ掛ける (→ 時空間)。
    そのアイデアになっているのが,「時間表現と距離表現を重ねる」である:
      《「c」を,「距離c」「光がc進む時間」の両義とする》
    ──そこで,光円錐の面の傾きが1になる。