Up 「時間の遅れ」現象 作成: 2017-12-06
更新: 2017-12-06


    「ローレンツ収縮」の論理は,つぎを導く:
      《等速で相対運動している二つの時計は,一方から見て他方が遅れる》
    ところで,つぎが事実としてある:
      《宇宙旅行をして地球に戻ってきた者の時計は,地球の時計より遅れている》
    つぎのようにはならない:
      《どっちの時計も,相手の時計より遅れている》

    この事実は,「ローレンツ収縮」に反するものではない。
    実際,《宇宙旅行をしてきた時計は,地球の時計より遅れる》の事実は,「ローレンツ収縮」の説明するところである。
    そして,《地球の時計は,宇宙旅行をしてきた時計より遅れる》とはならないのは,「ローレンツ収縮」の前提である「等速」──慣性の「等速」──が崩れているからである。

      要点: 互いに等速運動している二つの時計は,付き合わせて比べることができない。


    この状況を図示する。
    ct 軸を,地球の世界線 \( w_{地球} \) がこれと平行になるようにとる。
    宇宙船の世界線 \( w_{宇宙船} \) は,つぎのように描かれるものになる:
    宇宙船の時計がBにおいて示す時間T′ は,Tより小さい:

      T′ は, 「宇宙船の世界線<AからB>の固有時間」であり,つぎの計算で求まる: \[ T^{'} \,=\, \int_0^{T} \sqrt{ 1 - \frac{ | {\bf v}(t) |^2}{c^2} } \,dt \] Tは「地球の世界線<AからB>の固有時間」でなければならないが,実際つぎの計算結果はTである: \[ \int_0^{T} \sqrt{ 1 - \frac{ | 0 |^2}{c^2} } \,dt \] そして T′ <T であることが,二つの計算式の比較からわかる。


    今日, 「高速運動による時計の遅れ」は現実的な問題である。
    生活の基本インフラのうちに,「時計の遅れ」が如実になる高速を扱うものが,入って来たからである。(例:GPS )
    ひとの生活は,これらにますます依存するようになっている。