Up 気温計が示す気温とは? 作成: 2023-05-18
更新: 2023-09-15


    気温計は,気温を表示する。
    これは,気温計が,<直に受け取ったもの>を気温に表現していくということである。

    気温計が直に受け取っているもの,それは放射線である。
    気温計は,これが受ける放射線の強度を物理的現象や電気的現象に変換する。
    その物理的現象ないし電気的現象が,気温として読まれる。


    気温計が受ける放射線は,太陽光の散乱放射線と,様々な物体の<内からの>放射線である。
    そして後者の一部として,空気の<内からの>放射線がある。

    気温計が示す「気温」は,空気の温度ではない。
    気温計が空気の温度を示すのは,空気の<内からの>放射線のみを受け取っている場合であるが,そのような気温系は実現されていない。


    気温計が示す「気温」を空気の温度に見立てようとする者は,気温計の設置方法を考えてきた。
    そして昔は,「百葉箱」が気温計設置の一般的方法になった。
    それはつぎのような形状のものである:
三浦 (1940), p.9 から引用

    この形状に込めた思いは,「空気の<内からの>放射線以外を,遮断」である。
    しかし,「遮断」は錯覚である。

    繰り返すが,気温計が示す「気温」は空気の温度ではない。
    翻って,「気温」とは気温計が表すものである。


  • 引用文献
    • 三浦栄五郎 (1940) :『気象観測法講話』, 地人書館, 1940