Up 熱圏は 2000℃」とは? 作成: 2022-06-28
更新: 2023-05-28


    大気圏は,対流圏,成層圏,中間圏,熱圏,外気圏の区分で考えられている。
    ここで熱圏は,大気が 2000℃ にも達する高温だということで,この名前がついている。

    しかしこの 2000℃ は,工業炉の 2000℃ とは比べられない。
    気体分子数の相違から,人の生活空間の気温とも比べられない。
    熱圏の 2000℃ は,想像のしようの無いものである。

    温度の様は,物質依存である。
    まったくの別物に同じ温度表現が使われることに,混乱してしまう。
    しかし「想像のしようが無い」の不平を言っても始まらない。
    行うべきは,つぎの確認作業である:
      「熱圏の 2000℃ は,気温をどう考えているのでこうなるのか」


    つぎの命題がある:
     《 気体分子の直進運動エネルギーの平均値は,絶対温度に比例する》
    そこで,この関係を逆用して,気温を決めることができる。

      注意: この命題を「運動エネルギーの平均値が温度」「温度は運動エネルギーそのもの」のように短絡・曲解する向きがある。──特に,気象学の安いテクストにこれが目立つ。


    実際,熱圏の「2000℃」は,つぎのように導かれるものである:
      いまわたしのいる所が
        気温:15°C
        気体分子の直進運動エネルギーの平均値:a
      であるとする。
      そして熱圏が
        気体分子の直進運動エネルギーの平均値:aのk倍
      であったとする。
      このとき,熱圏の気温は (15+273) × k (ケルビン)

    よって熱圏の気温が 2000℃ ということは,
        (15+273) × k = 273 + 2000
         ⇒ k= (2000 + 273) ÷ (15+273) ≒ 8

    というわけで,「熱圏は 2000℃」は,あるモデルに拠って計量・計算するとつぎが得られると言っているのである:
     「 熱圏での<気体分子1個の直進運動エネルギーの平均値>は,人の生活空間でのそれの8倍」


    備考. 「絶対温度」
       「絶対温度」は,絶対零度が存在する温度のことである。
    絶対零度が正しく定められていれば,単位 (つまり,数値を1上げる単位) は任意に決めてよい。
    現前の「絶対温度」は,単位を摂氏温度の単位に合わせているわけである。