Up 「熱エネルギー・温度」の定義 作成: 2023-09-17
更新: 2023-09-17


    物を,つぎのようなものと考える:
      《この物にとっての<最も乱雑な状態>に向かって,
       状態の乱雑さを単調に増している》

    この見方を,数理化する。
    そのために,
    1. <乱雑さ>全体の集合,を立てる
    2. この集合に,「位」の代数的構造を入れる。
    これにより,「乱雑さ」が大小が言えるものになる。


    「位」の代数的構造は,アフィン空間である。
    「位」は,アフィン空間「点」である。
    アフィン空間は,ベクトル空間を内包する。
    これは,「位」でいうと,「位は量を内包する」ということである。
    つぎは,「位は量を内包する」の例:
      <時刻>は,<時刻の変化=時間>を内包する
      <高度>は,<高度の変化=上下移動>を内包する
      <位置>は,<位置の変化=移動>を内包する
      <温度>は,<温度の変化=温度の上昇下降>を内包する
    そしてこれらと同型に,
      <乱雑さ>は,<乱雑さの変化>を内包する

    ことばにすると抽象的になるので,つぎの絵図で了解すべし:


    さて,物を
      《この物にとっての<最も乱雑な状態>に向かって,
       状態の乱雑さを単調に増している》
    と定めたが,これはつぎのように表現される:
      《状態が乱雑であるほど,その状態になる確率が高い》
    そしてこれは,つぎのように言うのと同じ:
      《状態が乱雑であるほど,その状態の<場合の数>が大きい》

    この表現を,関数で表現する。
    即ち,各乱雑さ \( x \) に,それの場合の数 \( c_x \) の桁数──即ち,\( log\ c_x \) ──を対応させる関数を,\( f \) とする。

    \( f(x) \) を \( c_x \) ではなく \( log\ c_x \) にする理由は,
    • \( c_x \) だと値が大きくなり過ぎて,実用的なグラフにならない。
    • \( f(最大) = 0 \) になり,形がよい。
    • 後々,計算処理がうまくいく。

    f は,つぎのようになる:


    ここで,つぎの言い換えをする:
      「乱雑さ」→「熱エネルギー」
      「場合の数の桁数」→「エントロピー」

    これにより,これまで述べてきたことがつぎのようになる:
      物は,
        《この物にとっての<最大の熱エネルギー>に向かって,
         熱エネルギーを単調に増している》


    ここで,いよいよ「温度」の導入となる。

    f のグラフの形に注目しよう。
    グラフは,変化率がつぎのようになっている:
    • 熱エネルギー0で,最大
    • 熱エネルギー最大で,0
    • その間,単調減少

    この変化率に,「温度」を見ることにする。
    「温度」のグラフは,つぎのようになる:
          \[ \frac{ d }{ dx } ( log c_x ) = \frac{ 1 }{ c_x } \frac{ d }{ dx } ( c_x ) \]

    物は,つぎにむけて単調に推移しているというわけである:
      <熱エネルギー最大 ≡ エントロピー最大 ≡ 温度0>
    これは,「物の進化論」である。