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Prigogine & Stengers『混沌からの秩序』
p.169
異なった速度で動く物体間の接触をすべて避ける力学的機関と同様に、理想的熱機関は、異なった温度の物体間の接触をすべて避けなければならない。
したがって、そのサイクルは、温度の異なる二物体間に直接に熱が流れることによっては温度変化が起こらないように設計されなければならない。
そのような熱流があると、それは力学的仕事をしないので、機関の効率を下げることになってしまう。
それで、理想的なカルノー・サイクルは、かなり巧妙な装置であって、温度の違う物体の接触を伴わずに、温度の異なる二つの熱源の間に熱を伝達するという逆説的な結果を達成している。
それは四行程 [2つの等温行程と2つの断熱行程] に分けられている。
二つの等温行程の間、系は二つの熱源のうちの一方に接触していて、この熱源の温度に保たれている。
高温熱源に接しているとき、系は熱を吸収して膨張する。
低温熱源に接しているとき、熱を失い圧縮する。
この二つの等温行程は、系を熱源から隔離した二つの行程 [断熱行程] によって結ばれ、全体はサイクルを作りあげる。
この断熱行程では、熱はもはや系に出入りしないが、系の温度は、膨張あるいは圧縮の結果、変化する。
系が一方の熱源の温度から他方の熱源の温度へ移行するまで、系の体積は変化し続ける。
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- 参考サイト
- 参考文献
- Prigogine, Ilya & Stengers, Isabelle : Order out of chaos ─ Man's new dialogue with Nature.
Bantam Books, 1984.
伏見康治・他[訳]『混沌からの秩序』, みすず書房, 1987.
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