(Belknap『脳はいいかげんにできている』, p.263 から引用 )
- REM (Rapid Eye Movement) 睡眠
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Belknap『脳はいいかげんにできている』
pp.264,265
目を閉じていても、角膜の膨らみがあるため、まぶたの下で眼球が左右に素早く動いているのが容易に見てとれる‥‥‥
他にもさまざまな変化が生じる‥‥‥
まず、呼吸数 (心拍数、血圧も) が増加する。
それから、性的な反応 (男性ではペニスの勃起、女性なら乳頭や陰核の勃起、膣液の分泌など) も見られる。
さらに驚くべきなのは、筋緊張の変化だ。
大人の場合、睡眠中に通常、一晩で約40回、自ら意識することなく姿勢を変える。だが、そうした動きは、レム睡眠中には一切起きない。
レム睡眠中には、体は一切、動かないのだ。筋緊張がまったくなく、体は完全に弛緩した状態になる。
レム睡眠は、横になった姿勢でないと不可能だ。‥‥‥特にエコノミークラスの窮屈な席で毛布にくるまっているような状態では、何とか眠ることはできても、レム睡眠に入ることはできないのである。
レム睡眠は「逆説睡眠」とも呼ばれる。
脳波を見ると、覚醒時に似ているのに、眠っている当人の体は完全に弛緩して動かないからだ。
このようなことが起きるのは、脳の運動中枢では筋肉に盛んに信号を送っているのに、その信号が脳幹のレベルで、シナプスの抑制性の作用によりブロックされているためである。
ただし、ブロックされるのは、悩から脊髄に向かう命令の流れだけだ。
脳幹から脳神経に向かう命令、つまり目や顔を動かす命令 (あるいは心拍数を制御する命令) の流れは妨げない。
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- 年齢
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Belknap『脳はいいかげんにできている』
pp.265,266
人間の睡眠は、年齢によっても変化が生じる。
レム睡眠に費やす時間の割合は、誕生時には50パーセントにもなるが、壮年期には25パーセントに低下し、高齢になると15パーセントにまで低下する
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- 「自己組織化」
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Belknap『脳はいいかげんにできている』
pp.270
スティックゴールドは次のように書いている。「睡眠、特にレム睡眠に特有の機能とは、脳、精神の状態を変化させることである。
その際、元はバラバラの、もしくは結びつきのさほど強くない記憶、多くの場合、感情を伴った記憶どうしをつなぎ合わせ、一つの『物語』のようなものにまとめていく──この『記憶の再活性化』または『記憶の関連付け』とでも呼ぶべき作用、記憶の定着、統合の作用は、我々がこの世界で生きていくための能力を高めていくと言える」
‥‥‥
レム睡眠とノンレム睡眠が交互に起こる睡眠をとることで、目に見えて学習効果が向上するのも確かだ。
「一晩寝て、朝に考えた方がよくわかる」というのは、世界中に流布している経験則
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- 参考/情報サイト
- 参考文献
- Linden, David J. : The accidental mind: How brain evolution has given us love, memory, dreams, and god.
- Belknap Press, 2008.
- 夏目大[訳]『脳はいいかげんにできている その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ』, 河出書房新社 (河出文庫), 2017.
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