Up <ミクロ>の存在論 作成: 2019-12-31
更新: 2019-12-31


    ひとが思う「スケール (尺度)」は,連続スケールである。
    この思いでは,ミクロスケールは無際限になる。
    「10−100 メートル」なんていうのも,思えてしまう。

    実際,数実在論──イデア論──は,「10−100 メートル」が存在すると言うことになる。
    さて,科学は何を言うことになるか?

    科学が言うのは,《スケールのミクロ溯行には終わりがある》である。
    科学は,物実在論である。
    イデア論だと量 [イデア] の現象が物だが,科学だと物の現象が量ということになる。
    そして科学は,物のミクロ溯行には終わりがあると言うのである。


    この<終わり>の形は,「最小粒子」だと存在論として不満がある。
    「粒子」は,<部分>──よりスケールの小さい物──が思えてしまうからである。

    幸い科学は,ここをうまくやってくれた。
    ミクロスケールでは物は波になる,とするのである。
    ここで「波」は,存在確率と読まれる波である。
    そして確率的に存在しているものが,粒子である。
    かくして,「粒子かつ波」がミクロスケールでの物の有り様になる。

    波は,「物質波 (de Broglie wave)」と呼ばれる。
    そして,粒子の有り様は,シュレージンガー方程式の解として得られる。
    このとき,粒子には特定の有限個のあり方しか許されない。

    この有限個が見えるスケールが,スケールの最小である。
    これ以下のスケールは存在論的に意味をもたないから,このスケールは「最小」なのである。


    ちなみに,科学の存在論からは,哲学の存在論の幼稚さが反照される。
    その幼稚は,<井の中の蛙>的個人の机上論という構造に由来する。