Up 宇宙が暗い理由 作成: 2017-12-31
更新: 2022-06-02


    ひとが星空を見ているとき,何を見ているか?
    ひとが星空を見ているのは,プラネタリウムの星空を見ているのと同じ。
    即ち,自分が中心の半球面に投影された宇宙を見ている。
    その半球面の半径は,眼の良し悪しで違ってくる。
    ふつうは 10km,眼のいい人で 20km,といったところか?

    半径10km とすると,半球面の面積は,(4× 3.14 x 102) ÷ 2 = 628 km2
    この面積を,つぎに2分して考える:
    1. すべての星の断面積の和が投影された面積
    2. 残りの面積

    <残りの面積>のところは,そもそも光の無いところなので,暗い。
    <すべての星の断面積の和が投影された面積>のところはどうか?

    夜空を明るくするのは (月を除いて) 星の明かりだが,輝いて見える星はほんのちょっと。 遠くの星は暗くて見えないのである。
    (光は距離の2乗に反比例して弱くなる!)

    というわけで,夜空は暗い。


    「オルバースのパラドックス」というのがある:
      「 宇宙の恒星の分布がほぼ一様で、恒星の大きさも平均的に場所によらないと仮定すると、空は全体が太陽面のように明るく光輝くはず」
    このパラドックスは,「塵も積もれば山となる」のパラドックスの類である。
    「星は遠いほど暗くなるが,星は無数にあるから,微弱な光でも合わせれば山となる」というわけである。

    「塵も積もれば山となる」のパラドックスには,どう返すか?
    「塵が積もるくらいでは山にはならない」と返す。
    「例えばつぎの如し」,と:
        1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + ‥‥‥ = 1


    ちなみに,夜空の暗いことを「背景限界距離」で説明しようとする論がある。
    深い森に入ると森の外が見えない。
    木の幹の重なりが,森の外を見えなくしている。
    深い森には,背景限界距離というものがある。
    この背景限界距離を宇宙 (「星の森」) に適用して,オルバースのパラドックスの中の「星は無数にあるから」を退けようというのである。

    しかし,この論法はだめである。
    「星の森」の背景限界距離を実際に計算すると,「星の森」には背景限界距離は存在しないという結果になるからである。