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Brown (2018), pp.161,162.
リジエネラテイブな農法へのシフトを進めようとすると、たぶん最初は作付けの品目にマメ科を増やす必要が出てくると思う。
これは炭素と窒素の比率、つまり炭素率 (C/N 比) のためだ。
土壌の有機物部分の炭素率はおよそ 12 (つまり炭素12に対して窒素1)。
地表の植物残渣の炭素率は、植物の種類によって割合が変わる。
たとえば、
ライ麦や小麦は約 80、
トウモロコシは 57、
アルファルファは 25、
ヘアリーベッチは 11。
地表の残渣は、土壌生物によって最終的に炭素率12くらいまで分解される。
いちばん分解しやすい理想的な炭素率 24。
これが微生物にとって最適な割合だ。
炭素率が高すぎると、地中の微生物は窒素が不足し、土のなかの別の場所から窒素を見つけてこなければならなくなる。
作物やカバークロップの作付けを考えるうえで、炭素率はぜひ念頭に置いておきたいポイントだ。
よく、不耕起に切り替えたばかりの生産者が「地表の作物残渣がなかなか分解されない」と言うことがあるけれど、これは養分の循環がうまく機能していないためだ。
だいたいにおいて、炭素率が高いほど残渣の分解に時間がかかり、炭素率が低ければ早く分解する。
また、炭素率によって、窒素がどのくらい使われ、次に植える作物にどのくらい残されるか、といったことも決まってくる。
小麦など炭素率の高い作物は、炭素率の低いエンドウマメなどに比べ、ずっと分解に時間がかかる。
これを解決するには、地中で適切な養分循環が起こるような炭素率の作物やカバークロップを育てればよい。
たとえば、不耕起を5年もやった友人が、「作物残渣があまりに厚く積み重なって、種を播くのも難しい」と電話してきたことがある。
この目でたしかめたくて彼の農場に足を運んでみると、過去5年間そこに何が植えられていたかが、残渣からくっきりと読みとれた。
ヒマワリ、春小麦、トウモロコシ、大麦、冬小麦──どれも炭素率の高い作物ばかり。
問題の元凶は「残渣」ではない、「炭素率」だったのだ。
解決策はシンプルで、窒素分の多いマメ科を足すこと。
彼は作付けにエンドウマメを加え、早刈りの作物のあとにもマメ科や大根を植えることにした。
マメ科は炭素率のバランスを整え、大根の根は窒素を貯留し、翌春に放出する。
窒素が増えたおかげで、作物残渣の分解速度は見事に早まった──ということで、一件落着。
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- 引用文献
- Brown, Gabe (2018) : Dirt to Soil ─ One Family's Journey into Regenerative Agriculture
- Charles Green Publishing Co., 2018
- 服部雄一郎 [訳]『土を育てる──自然をよみがえらせる土壌革命』, NHK出版, 2022
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