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和田信一郎『土壌学』, 13. 畑の土, p.224.
土の表面からの水の蒸発量が浸透量よりも多いような地域(乾燥地域)では,土の表面に塩類が集積する.
塩類集積は,地下水面から毛管上昇してきた地下水が溶質を土残して蒸発する.
また乾燥地域の河川水は塩類濃度が高いことが多く,そのような河川水を灌漑水として用いる場合も,それに溶解していた塩類は表土に濃縮される.
乾燥地で灌漑農業を行うときには塩類の集積は原理的には不可避である.
可能な対策としては,できるだけ塩濃度の低い灌漑水を利用し,可能蒸発量に見合った分だけの灌水を行い,肥料としては塩化物塩はできるだけ避ける等に限られる.
いったん,植物生育に不都合なほどの塩類が集積した場合には,多量の淡水で洗浄除去するか,表土を掘削除去する以外の対策はない.
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同上, p.225.
日本の露地畑では塩類集積の恐れはない.
しかしガラス温室や施設畑などの降水が遮断されている環境下では,多量の施肥の結果,土壌溶液の塩濃度が著しく上昇することがある.
塩類が集積した施設畑では,屋根を除去して休閑し,集積した塩類を降水によって溶脱させるという対策が取られたことがあった.
しかしこれは,地下水の硝酸汚染につながること,施設が大型化恒久化したため屋根を除去すること自体が難しい,などの理由で次第に行われなくなっている.
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