サバク化の端緒は,腐植の減少である。
腐植の減少は,土壌浸食を招く
腐植減少と土壌浸食は,正のフィードバックの関係になる。
よってその地は,サバク化の一途になる。
人のする耕起は,腐植層の掘り返しであり,腐植の破壊である。
大型草食動物による草木の過食は,腐植の材料の供給を減らすことなので,腐植の減少になり,腐植の破壊に通じる。
前者は腐植の直接的破壊であり,後者は関接的破壊である。
前者はサバク化の進行が急激になり,後者はこれに比べて緩やかとなる。
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『生きている土壌』, p.45.
腐植の減少は土壌微生物による土壌粒子の活動的な構築をひどく妨げ、それはまた危険な土壌浸食を引き起こす。
腐植含量が低くなると、土は構造を失い、雨や雪によって微細な土壌粒子、つまりコロイドに加えて、貴重な養分になる塩類までも洗い流され、むなしく地下水の中へ消えていく。
腐植が減少するにつれ、地下水が肥料分を含むようになる。
硝酸塩が海に達し、海を富栄養化し、藻や水生植物が繁茂すると、治水や漁業に深刻な問題を引き起こす。
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同上, pp.52,53
土の中の腐植の欠乏の結果として、次のようなことがはっきりとしてくる。
- 耕地の構造崩壊
- 土の耕しやすさと熟土と団粒構造の,消失
- 耕耘による土の硬化
- 風、水、氷による土壌の浸食現象
- 土の保水力の低下
- 軽鬆土での土粒の粘着力の低下
- 土壌生物の減少
- リン酸の固定とリン酸肥料の不活性化
- 酸素や二酸化炭素の交換阻害
- 土の吸着能の低下
- 地下水汚染の危険性
- 停滞水の富栄養化
- 流亡と浸透による栄養塩や微量元素の減少
- 土の固結と挨塵化
- 害虫と病原菌の絶え間のない発生
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一方,人はいまの耕作法を改めることはできない。
農業は商品経済に取り込まれているからである。
所謂「非耕起農業」では,食糧商品の大量生産にまったく間に合わない。
人類は,<耕作によって大地をサバク化する者>へと進化してしまった。
ひとはいまの生活を改めることはできない。
サバク化はだれが悪いという話ではないのである。
サバク化は「是非も無し」というわけである。
- 引用文献
- Erhard Hennig : Geheimnisse der fruchtbaren Böden。
Organischer-Landbau Verlag Kurt Walter Lau, 1994.
中村英司[訳]『生きている土壌』, 日本有機農業研究会, 2009.
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