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和田信一郎『土壌学』, 12.2.1. 森林土壌の断面, p.203
森林では,ほとんど例外なく,落葉や落枝という形で土の表面に有機物が加えられる.‥‥‥
森林土壌の表面にはほとんど例外なく落葉・落枝の層が存在する.
この層はリター層とよばれる.
リター層の下には,小動物に蚕食されたり,部分的に変質したりした落葉落枝の層があり,その下には,さらに変質した暗色,細粒状の有機物からなる層がある.
これらの層はそれぞれL層,F層,H層とよばれる.
またこれらの有機質層(有機物が大部分を占める層)は全部まとめてO層とよばれることもある(図12.2).
O層の下には無機質の土壌層がある.
最上部(厚さは森林のタイプや地形などによってさまざまであるが)は腐植物質に富む層であり,その下層と比較すると暗褐色味が強い.
この層は有機物に富むが,あくまでも構成物質の主体は無機物(鉱物)であり,暗褐色であっても有機物含量が10%を超えることは多くない.
この層はA層とよばれる.
A層は下の方に行くにしたがって次第に褐色味が弱くなり,黄褐色ないし赤褐色の層に移行する.
A層から下層への漸移層はAB層,暗色味の薄い下層はB層とよばれる.
B層の組織を顕微鏡で観察すると,亀裂面に,光学顕微鏡では識別できないくらい小さい粒子が沈着していることが多い.
これは上層(A層)から浸透水に懸濁して運ばれてきた粘土粒子である.
またB層には鉄やマンガンなどの酸化物や水酸化物が沈積していることもある.
これらは上層で溶解してイオンとして,あるいはフルボ酸との錯体として移行してきた鉄やマンガンイオンがそこで水酸化物や酸化物として沈殿したものである.
このようにA層は有機物の集積層であると同時に,無機物に関しては溶脱層である.
一方B層は様々な物質の集積層となっている.
さらに下層に行くと,土状ではあるが,物質の集積作用は認められない層がある.
この層はC層としてB層から区別される.
森林では土の表面に絶えず落葉・落枝が加えられるのでO層(特にその中のF層,H層)では多量の腐植物質が生成される.
生成された腐植物質の大半は土の表層で土の鉱物に吸着されたり,鉱物から溶出したアルミニウムイオン,鉄イオンなどと錯体を形成したりしてその場にとどまる.
しかしフルボ酸が多量に生成されると,その一部は土の鉱物を溶解しながら下方に浸透する.
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