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和田信一郎『土壌学』, 4.1.3 微生物, p.39.
土壌微生物の量は,その生体量(バイオマス量)や,それを構成する炭素の量(バイオマス炭素量)で表されることが多い.
個体数を数えることが難しいことと,細菌とカビのように1個体の大きさが異なるものをこみにして個体数で表しても意味がないからである.
生物体の炭素含量は乾物あたりで,微生物で500 g/kg,植物で450 g/kg,動物で470 g/kg 程度とされている.
いずれも500 g kg-1に近い.
また水分含量は微生物で650〜750 g kg-1である.
これらの数値から,微生物の乾燥重は微生物バイオマス炭素量を2倍すれば求めることができ,さらにそれを3〜4倍したものが新鮮微生物重となる.
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- 「普通の畑には1アール (10m × 10m) あたり 49.0 〜 52.5 kg のカビ,14.0 〜17.5 kg の細菌がいます」
(『微生物生態学への招待』, p.59)
- 微生物の種類・数量の推定方法
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和田信一郎『土壌学』, 4.1.3 微生物, pp.39,40
1) 直接検鏡法
蛍光色素で染色して蛍光顕微鏡で直接観察する.
死菌と生菌を区別して計測することができる.
いうまでもなく,この方法で測定できるのは個体数である.
2) 培養法 (注意:土壌微生物の大部分は難培養性)
■希釈平板法:
栄養分を含んだ寒天のプレート上に,希釈した土の懸濁液や,土に水を加えて振とうすることによって得た抽出液を,薄く広げて一定時間培養する.
微生物は分裂して肉眼でも観察できるコロニーをつくるので,コロニー数を計測することによりプレート上に広げた懸濁液や抽出液中にいた微生物個体数を知ることができる.
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■最確値法(希釈頻度法):
土の懸濁液を段階的に希釈し,一定量を培地を含む複数の容器に入れて培養する.
希釈度が高くなると,微生物の生育が認められる容器(陽性)と認められない容器(陰性)が出てくる.
微生物が容器に入る確率はポアソン分布に従うので,いくつかの希釈段階における陽性容器の割合から微生個体数を推定できる.
3) 生化学法
■クロロホルム燻蒸法:
土試料を密閉容器に入れクロロホルム(トリクロロメタン)蒸気を流通させて(1日程度)微生物を死滅させ,菌体を自己溶解させる.
燻蒸土に0.5 mol L-1硫酸カリウム水溶液を加えて溶解成分を抽出し定量する.
同じ処理を非燻蒸土についても行い,燻蒸土と非燻蒸土の差を微生物由来成分とする.
通常,炭素,窒素,リンなどが定量される.
定量成分量に経験定数を乗じて微生物量とする.
この方法で測定されるのは菌体数ではなく,微生物体を構成していた炭素等の量である.
この炭素量をバイオマス炭素量という.
■ATP法:
土試料に,界面活性剤などの抽出材を加えて音波処理によって菌体を破砕してATP(アデノシン三リン酸)を抽出して定量する.
抽出量に経験定数を乗じて微生物バイオマス量を推定する.
4) 分子生物学的方法
土試料に酵素や界面活性剤などを添加して微生物菌体を化学的に破壊したり,ガラスビーズを加えて強力に振とうすることにより機械的に破砕して微生物からDNAを溶出させ,PCR法による増幅と電気泳動による遺伝子解析を行う.
いったん微生物を分離したのち,DNAを回収する方法もある.
この方法は,微生物量の定量というより微生物の種類の分析に有用である
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- 参考Webサイト
- 引用/参考文献
- 金原和秀・他 (2008) : 土壌環境中の細菌の検出法
環境バイオテクノロジー学会誌, vol.8(2), 2008, p.81-87
- 横山和成[監修] (2015) : 土壌微生物のきほん
- 西尾道徳 (1989) : 土壌微生物の基礎知識
- 土の微生物学 (改訂版)
- 『森とカビ・キノコ──樹木の枯死と土壌の変化』
- 『微生物は善玉か悪玉か』
- 大地の五億年──せめぎあう土と生き物たち
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