Up 偽物化:dynamics を放棄 作成: 2024-03-30
更新: 2024-03-30


    「万物は流転する」
    科学の探求対象は,時間の流れの中で変化している。
    変化しているので,「Aの変化」という言い方もできないことになる。
    一つの対象を変化の中で追うということは,できないからである。

    時間の流れの中では対象が定まらないので,研究者は時間を止め,停止した世界を研究対象にする。
    しかしこの「時間停止」は,偽物を研究対象にすることである。
    実際,この方法論では,《存在しないものを存在にする》が研究のスタイルになる。


    現前の土壌学だと,「腐植」の主題化にこれが顕著である。
    「腐植」は,無数の土壌微生物の生態系である。
    これの研究は,難し過ぎる。
    そこで,生物を取り去った残りを,「腐植物質」の題目で研究対象にする。
    即ち,「腐植物質」の化学をやる。
    しかし,「腐植物質」なんてものは存在しないのである。

    実際,やっていることはつぎと同じ:
      人の生活の系 (「腐植」と呼ぼう) から人を消し去り,
      残ったもの (「腐植物質」と呼ぼう) を化学的物質として分析する。
    この場合,どこからどこまでが「腐植物質」?
    ──それらを「腐植物質」と定めるロジックは?
    そして「腐植物質」を化学的に分析することにどんな意味がある?