Up 根圏 作成: 2024-03-17
更新: 2024-03-17


      和田信一郎『土壌学』, 4.3.2. 植物根の生活, p.46.
    植物根表面から取り込まれる物質は,それぞれ別々のチャネルやトランスポーターを通過する
    このため,植物の養分吸収は,土壌溶液がそのまま細胞内に吸引されるというような単純なものではない
    水チャネルから水が吸収されると,土から植物へ向かう水の移流が生ずる
    土壌溶液に溶存する養分はその水の流れに乗って植物根表面に達するが,あまり多量に必要とされない養分は,その養分に対応するチャネルが閉じぎみに制御されるため細胞内への移動が抑制される
    この結果,根の近傍での濃度が土壌溶液中の濃度よりも高くなることがある
    一方,土壌溶液中濃度が低いにも関わらず多量に必要とされるような養分,たとえばリン酸イオンやカリウムイオンでは,トランスポーターの働きによって積極的に細胞内に取り込まれる
    その結果,根の近傍の濃度はさらに低下することになる.
    根は土から養分を吸収するだけでなく,土に様々なものを放出している
    まず,多年生の植物であっても根は更新されており,古い根は枯死して土壌生物に利用される
    また,生きている根の先端部からは多糖類等が分泌されている
    これは吸水して根端を取り巻くゲル状物質となる
    これはムシゲルとよばれ‥‥‥
    このほか,根からは各種の有機酸がかなり多量に分泌されており,土粒子に強く吸着されたリンなどの必須元素を溶出させたり,アルミニウムなどの植物にとって毒性のあるイオンと結合して無害化するなどの機能を果たしたりしている. ‥‥‥
    このように植物根は土の生物にとっては貴重な有機化合物の供給者として機能しており,根の周りには根から離れた部分とは異なる生態系が構成されている
    この部分は根圏(rhizosphere)とよばれる.