Up 古人(いにしえびと)」は存在しない 作成: 2018-06-24
更新: 2018-06-24


    「日本型」を想う者は,現前に「日本型」の衰滅を見る者である。
    翻って,「日本型」を体現していた「古人(いにしえびと)」を想定することになる者である。

    「古人」の発想は,古に一様な文化を求める発想である。
    これは,妄想である。
    一様な文化は,交通がこれを実現する。
    過去に溯ることは,交通技術の貧しい時代に溯ることである。
    これは,一様の度合いが増す方向ではなく,多様の度合いが増す方向である。


    実際,「古人」を立てられないことは,日本歴史のなかの
       「狩猟採集文化を,後から来た農耕文化が駆逐」
    を考えれば,直ちにわかることである。
    「古人」を立てることは,農耕種族を「古人」に仕立てることであり,その文化を一つのものに想念して「やまと」を仕立てることになる。

      鬼伝説の鬼は,農耕種族が山に追いやった民である。
      農耕民にとって彼らは,何をしてくるかわからない怪しい存在になる。
      そしてこの「怪しい存在」は,時代が降り,「サンカ」や「部落」になるというわけである。


    ちなみに,「もののあはれ」から「やまとたましひ」「皇大御国(スメラオホミクニ)」へと進んでしまう本居宣長は,当時の歴史学・民俗学・人類学 (比較文化学) の限界 (歴史的限界) ということになる。

    翻って,これらの知識を持ってしまった現代人は,「古人」を立てられない──特に「日本型」を立てられない──わけである。