Up 自然死 作成: 2019-06-26
更新: 2019-06-26


    「延命」は,「自然死を却ける」である。
    よって「延命を択ばない」は,「自然死を択ぶ」である。

    死は,生命維持機能の停止である。
    翻って,この機能停止を阻むのが「延命」である。
    この機能停止の予兆を捉え,機能停止の要因を除こうとするのが「予防」である。

    予防知識は,生活空間を予防仕様につくらせる。
    延命技術は,危険な状態に陥った命をもちこたえさせ,そこそこの回復にまで至らせる。

    予防知識と延命技術は,これをもつ生き物は人間だけというものではない。
    生物の<生きる>には,予防知識と延命技術の所持が含意されている。
    よって,「自然死を択ぶ」の「自然」は,意味の漠然としたものである。
    実際ここで「自然」のことばを用いるのは,いまの人社会の「延命」が度外れていることを強調するためである。


    生命維持機能の停止の原因は,いろいろである。
    これを大まかにつぎのように分けておく:
      a. 生体プログラム
      b. 内部構造的
      c. 閾値超え
      d. 他の生物の餌食
      e. 破壊
       e1 物理的破壊
       e2 化学的破壊

    盛年過ぎの衰えには抗えない。これは a である。
    脳溢血とか心不全は,b である。
    熱中症・低体温症とか餓死は,c である。
    インフルエンザは,d である。
    自動車事故は,e1 である。
    一酸化炭素中毒は,e2 である。

      「癌」は,独特なものがある。
      a のように見えるし,b とも思われる。
      「ウィルス性癌」というものの存在が確かなら,d もある。

    「自然死を択ぶ」とは,これらに抗わない──「災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候 死ぬる時節には死ぬがよく候」の(てい)で──ということである。

      老人の「孤独死」は,不可抗力的に「自然死を択ぶ」になった場合である。