Up 「保守主義」 作成: 2018-10-14
更新: 2018-10-15


    共同体は,生じ滅する。

    共同体の<壊れる>には,外からの破壊と,自壊がある。
    共同体の自壊の内容は,員の共同体離れである。
    翻って,共同体があるとは,つぎの二つが成り立っているということである:
    1. 員を共同体に引き留める装置が働いている
    2. 員においては,共同体離脱の見通しを持てない


    共同体に引き留める装置は,しがらみと寄り合いと祭りである。

    寄り合いは,懐柔が機能である。
    共同体の中で員の対立が発生したとき,白黒を立てると黒にされた者の立つ瀬が無くなる。
    そこで,厭きるまで議論する。
    そして,「議論も尽きた──このまま続けても同じ」が全体の気分になったところで,決裁担当役に決めさせようとなる。
    決裁担当役は,共同体の長とか長老とかである。

    そして祭りは,鬱積の発散が機能である。


    「リーダシップ」「スピード感」は,商品経済の概念である。
    商品経済以前の地域共同体の寄り合いは,朝から晩まで,日数を限らず,である。

    商品経済下の共同体は,企業共同体である。
    商品経済は,企業共同体が地域共同体を駆逐する。

    商品経済の拡大という形の「進歩」は,地域共同体の員に共同体離脱の見通しを持てるようにする:
    • 通信の発達で,外の情報が入ってくる
    • 交通の発達で,移動が簡単になる
    • 「都会」に行けば,身一つで生業える (「賃金労働者」)


    地域共同体の消滅は,その共同体の文化の消滅である。
    商品経済は,商品経済以前の文化を滅ぼす。

    これは,反動を呼ぶ。
    保守主義である。

    実際のところ,保守主義は商品経済に対し無力である。
    保守主義は商品経済に抗えない。

    いま目にする旧文化は,保守主義のおかげで残っているのではない。
    旧文化は,商品価値になることで,そしてその限りで,残り得る。
    当然,もとの形では残れない。
    商品価値化の裁断・整形・修飾を被る。