Up 比較 :「記号論」 作成: 2018-09-29
更新: 2018-09-29


    自然の存在Xは,生物Aと生物Bでは意味合いが異なる。
    ──例えば,Aにとっては食べ物で,Bにとってはシェルターであるというふうに。
    このことを,「各生物は自然物を素材に独自の世界を形成している」と読むことにする。

    世界の要素は,自然物とは区別される。
    ──Xは,Aにとって食べ物であるが,存在として「食べ物」であるわけではない。
    世界の要素を,何と呼ぶべきか。

    「記号」と呼ぶのが,記号論である。
    本論考は,「幻想」と呼ぶことにする。

    本論考が「記号」を用いないのは,記号論は形而上学だからである。
    記号論は,認知科学の合理主義をさらに論理学的な体系へとまとめようとする企図である。
    したがって,合理主義がある程度うまくいく存在階層が,記号論の領分である。
    逆に,合理主義の通用しない存在階層は,記号論の領分ではない。
    そして,生物Aの世界は,合理主義の通用しない存在階層が一般的になる。

    生物Aの世界の論考は,どのような形式になるか。
    本論考は,生物Aの生態の論述──「生態学」──に代える。
    (実際,論考を観念論に陥らせない形式は,生態学に限る。)
    これは,生物Aの生態を一つの「自己組織化する系」「複雑系」と捉え,自己組織化のダイナミクスを論述するというものである。