Up 本論考の構成 作成: 2018-10-11
更新: 2018-10-11


    本論考は,3部構成につくる。

    第1部は,存在論である。

    人/生物は,所与 (「自然」) から,<存在>を立てる。
    これは,「自然」から,自分の「世界」をつくるということである。

    存在は,存在として立てたものである。
    存在は,<立てる>の作為に拠る。
    この構造において,存在は<幻想>である。

    人/生物は,通時的には,進化するものである。
    そして,共時的には,「個の多様性」を現す。
    幻想は,この変化の相で捉えるものである。
    幻想は,進化し,そして共時的に多様である。


    第2部は,ヒト種の幻想タイプとして,共同体幻想を講ずる。

    人は,社会的動物である。
    「社会的」の意味は,「共同体の員として生きる──他の生き方は無い」である。

    人がつくる幻想は,共同体の員としてつくる幻想である。
    それは,自ずと共同体的である。
    幻想のこの面を指して,本論考では「共同体幻想」と呼ぶことにする。

    共同体幻想の様態は,人の進化と「個の多様性」に応ずる。
    共同体幻想は,進化し,そして共時的に多様である。


    「進化」の内容は,「自己組織化」である。
    ──共同体幻想は,自己組織化する系である。
    この運動のモーメントに,「主義」タイプの幻想がある。

    「共同体の員として生きる──他の生き方は無い」には,「共同体の員を志向する」が含蓄される。
    人の幻想の根底は,共同主義である。

    生物は,可能なだけ種の個体数を増やすような生殖をする。
    この結果,生物の<生きる>は,<かつかつに生きる>になる。
    生物は,<かつかつに生きる>を生き抜く。
    ひとの場合,<生き抜く>の内容に,<よりマシにするよう工夫する>が入ってくる。
    ひとは,自ずと進歩主義になる。

    ひとは,進歩主義で,いろいろ試みる。
    これにより,一つの共同体の中では,これまでの生活様式・価値観が壊れ,そして複数の共同体の間では,これまでの勢力関係が壊れる。

    この破壊で被害を受ける者・被害を危惧する者は,対抗・対決の構えになる。
    対抗・対決が共同体内部の場合,この構えは「保守主義」である。

    破壊が共同体の外からの場合,あるいはそのように捉えられる場合,対抗・対決の構えは民族主義の形をとる。
    民族主義は,正のフィードバックをダイナミクスにする。
    こうして,「エスノセントリズム」レベルにまで高まる。

    エスノセントリズムの好例に,「国学」がある。
    本論考では,「幻想」の便利な題材として,「国学」にしばしば言及することになる。


    第3部は,疎外幻想を講ずる。

    人の<生きる>は,<共同体の員として生きる>である。
    <共同体の員として生きる>は,<共同体の員として生きることを強いられる>である。

    この強迫に,人は苦しむことになる。
    そして,「救い」「解放」「自由」「定め」等々の幻想をつくり出す。
    このタイプの幻想を,本論考では「疎外幻想」と呼ぶことにする。

    強迫に対し,人は「対決」と「受容」を両極とするスペクトラムを示す。
    本論考では,前者を「革命と自由」,後者を「宗教」の標題で,それぞれ論じるとする。