Up 文化の進化 作成: 2018-09-30
更新: 2018-09-30


    狩猟採集文化 (「縄文文化」) 圏の中に米作文化 (「弥生文化」) が入ってくる。
    「入ってくる」は,「物と人が入ってくる」である。

    米作は,経済性において狩猟採集に優る。
    そこで,狩猟採集を捨て米作に転じる者が続出する。

    米作者と狩猟採集者は,生活圏で争うことになる。
    米作者は田の開墾で,狩猟採集者の生活場所を侵すことになる。
    狩猟採集者は自分の生活場所を守ろうとする。

    米作文化は青銅器・鉄器文化であり,狩猟採集文化は石器・木器である。
    そして狩猟採集生活者は,なわばりを広く持つ必要から,離散している。
    争えば,米作文化側が勝つ。
    こうして,米作文化圏が狩猟採集文化圏を駆逐していくことになる。
    現象的には,《狩猟採集文化圏と米作文化圏の境界線が,これまで狩猟採集文化圏であったところに食い込んでいく》である。
    境界の移動は,《狩猟採集者が米作に転向する》と《狩猟採集者が米作者から逃げる》の両方である。


    米作文化圏の為政者は,狩猟採集者に対する自分の優越を誇って,狩猟採集文化圏駆逐の戦いを「蝦夷征伐」と称する。

    米作文化圏の学者は,「大和民族」の概念を立てる。
    「歴史的経緯」「進化」という考え──要するに,「時間」の考え──をまだ持てないためである。
    実際,「時間」を考えずに「大和民族」を言い出したら,狩猟採集から米作にいま転向した者は「大和民族」である。
    その学者については,「彼からn代溯った祖先から大和民族」の言い方をすることになる。

    この学者を嗤うことはできない。
    歴史学・進化論が学校で教えられているはずのこの時代にも,「日本人論」を立てる者は後を絶たない。
    事程左様に,ひとは「時間」を考えることを不得手としている。