Up 憂国 作成: 2018-09-22
更新: 2018-09-22


    挫折処理の最悪かつ最も不幸な形は,「憂国」である。
    島崎藤村『夜明け前』で描かれた「幕末維新の平田門人」は,これである。

    憂国は,傲慢の裏返しである。
    自分を<絶対>にすることから,自分の意に沿わない者はみな悪か愚になる。 そして,自分以外の者はもともと自分の意に沿わない者であるから,世の中が悪・愚になる。

    憂国者の傲慢は,<自信>に由来するものではない。
    師や天子に託する(てい)の傲慢である。

    師・天子とは,<正しい>を持つ者である。
    世の中は,師の説く当為から外れる。天子の意から外れる。
    したがって,世の中は<不正>である。

    憂国者は必ず師・天子を頂いている。
    そして,逆も真となる。
    即ち,師・天子を頂く者は必ず憂国者になる。
    <正しい>を立てれば世の中は<不正>になるわけである。