Up 「空」の意味を「虚空」にしてしまう 作成: 2018-06-06
更新: 2018-06-06


    存在の階層構造は,現象において「色即是空空即是色」を現す。
    仏教の謂う「空」は,もともとはこれである。

    「空」の存在論は,煩悩から脱けるためのものである。
    煩悩の内容は,現世利益への執着である。


    一方,空海は,ひとの現世利益を仏に祈願することを,自分の生業にする者である。
    現世利益は,これから脱けるというのではなく,仏にお願いするものとなる。

    「空」の意味は,己の位相と矛盾しないよう調整されねばならない。
    こうして,「宇宙」──大日如来は,宇宙の仏格化──が「空」の意味にされるというわけである:
      「大空位とは、法身は大虚に同じて無げなり。
       衆象を含んで常恒なり、故に大空と曰う。
       諸法の依住する所なるが故に、位と号す。」
      「諸法は、本より不生なり。
       自性は言説を離れたり。
       清浄にして垢染無し、
       因業なり、虚空に等し。」
                  (『即身成仏義』)