Up 水成分の出自・合理性 作成: 2015-03-08
更新: 2015-03-08


      『よくわかる分子生物学の基本としくみ』
    • 「生物は,分子の集合体として見ると,水と有機化合物からできていることになる。‥‥
      生物は 36億年ほど前に海の中で誕生しました。海の中で膜に囲まれた小さな袋ができたときが,細胞の誕生のときであり,生命の誕生のときであった。細胞の外にも内にも水がたっぷりあったわけだね。生物が水をたっぷり含んでいるのは,そういう誕生の歴史が関わっている。
      水には他の液体とは違う大きな特徴がいろいろあって,生物が生きていくしくみの上で好都合なんです。
      たとえば,たくさんの物質を溶かして,濃厚な水溶液をつくることができる。
      実際に細胞内は,非常に高濃度な物質が溶けたゲル状に近い水溶液です。」 (p.21)
    • 「水の一つの特徴は,分子量が小さいのに,普通の温度では液体であることです。
      似た分子量をもつ他の物質 (普通,常温では気体) に比べて,融点も沸点も以上に高い。
      気化熱も大きいし,比重も異常に高いし,表面張力も異常に強いのです。‥‥
      それはなぜか?
      この異常とも見える水の性質は,水分子同士がお互いに水素結合で強く結ばれていることに理由があります。
      水素結合は共有結合に比べれば‥‥弱いものではありますが,水分子ではこの結合に関わる原子間の距離が共有結合に匹敵するほどに短い。短いということは,結合が強いんです。
      つまり,水の分子は,水素結合を通じて,ほとんど全部の分子が一つにつながっている。‥‥
      沸点,融点,比熱が異常に高いのは,表面張力が異常に強いのは,水分子が水素結合で互いに強く結合しているためなんです。」 (p.24)
    • 「水のもう一つの特徴は,ものをよく溶かすことです。‥‥
      水分子は極性分子 ──酸素原子の周囲は電子の分布が濃くなってマイナス電荷を帯び,水素原子のあたりは電子密度が低くなって原子核によるプラス電荷が現れる。
      極性分子である水は,極性のある物質をよく溶かす。(食塩,アミノ酸,糖)」 (p.26)