Up 分子生物学 作成: 2015-03-07
更新: 2015-03-08


    細胞の諸機能を「マシン」に見立てるとき,動作しているものは分子 (特徴的に, タンパク質)である。
    分子に意思があるわけでないから,その動作は「傾向性 (if ‥‥ then ‥‥)」に因っていることになる。
    そしてこの「傾向性」を科学しようとしたら,化学・物理学になる。
    こうして,細胞の諸機能の科学は「分子生物学」になるというわけである。

    分子生物学は,つぎの作業を営む:
    1. 生体分子を分析する。
    2. 分析から,種別を同定する。
    3. 種それぞれの傾向性を同定する。
    4. 「いろいろな傾向性の動的平衡」という形で,細胞マシンの機能の説明をつくる。

    分子生物学は,まだマシンのおおまかなな動きを明らかにつつつあるる段階である。
    酵素の「鍵と鍵穴」の説明のように,マシンの要素の連結のメカニズムは,ブラックボックスになっている。

    したがって,「マシンの要素の連結のメカニズム」の説明の上位段階であるところの,このようなマシンの実現がなぜなったのかの説明には,まだまったく入っていけていないわけである。
    マシンの機能の説明が精緻になればなるほど,このように精巧で合理的なマシンがなぜなったのかの不思議は,ますます大きくなる。

    マシン実現のストーリーの探究は,「生物歴史学」ということになるが,この内容は「分子生物学」になる。
    翻って,「分子生物歴史学」(「分子生物学」を方法とする「生物歴史学」) が,生物学のまったくの空白地帯になっているわけである。
    実際,これの探究は,実質「生物構築学」である。