本論考は,「マルクス主義批判」を行うものである。
一般に,「批判」はつぎが手順になる:
- 相手の思想の描く<世界>がどんな構造になるものかを示す。
- この構造の無理 (論理矛盾) を示す。
- 「無理を通す」の結果を,論理的に導出する。
1. マルクス主義の世界観
どの思想も簡明である。
簡明でない思想は,思想でない。
簡明でない思想は,雑感・雑念のただの集積である。
思想の簡明は,文体に現れる。
ぐちゃぐちゃした文体は,思想が簡明でないことを示し,したがって思想でないことを示す。
ぐちゃぐちゃの文体を前にしたときは,これを捨てるか,読み手の方でこれをすっきりさせてやるかである。
すっきりさせるとは,文章を構造化するということである。
構造にならないときは,最終的に捨てることになる。
このようにして,マルクス主義を思想として捉えてやる。
そのときそれは,「疎外されている諸個人の解放」の思想ということになる:
- 「解放」の内容は,疎外の構造が無くなることである。
- 「疎外」の内容は,「本来<人は道具を使う>であるのが,<人は道具を使わされる> (この意味で<道具が人を使う>) になっている」である。
これを「転倒」と称し,「転倒」がもとに戻ることを「解放」とする。
- <道具が人を使う>にしているものは,資本主義的生産様式である。
したがって,「解放」の内容は,資本主義的生産様式が無くなることである。
- 資本主義的生産様式に替わる生産様式は,共産主義である。
共産主義社会は,人が他のものに使われることのない社会──自分が自分の主人になる社会──である。
ここで,「解放」実現の形について,二つの考え方がある:
- 資本主義的生産様式の自壊
- 資本主義体制打倒の破壊行動 (「革命」)
本論考が批判しようとする「マルクス主義」は,「解放」実現の形を「革命」とするマルクス主義の方である。
2. マルクス主義の世界観の無理 (論理矛盾)
資本主義的生産様式が立っている系は,複雑系である。
共産主義生産様式が立つは,相対的に著しい単純系である。
「革命」は,複雑系を単純系に変える行為である。
3. 「無理を通す」の結果
複雑系 (大) を単純系 (小) に替えることは,大と小の差分を整理することを含む。
この整理は,人の整理としては「粛正」「大虐殺」の形で現れ,富の整理としては「困窮化」の形で現れる。
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