Up 「労働」 作成: 2014-01-02
更新: 2014-01-05


    『資本論』の価値論は,「商品の交換」から「価値」を導出する。
    同じ論法は,「労働の価値」を導出する。

    商品全体の集合Aを考える。
    「商品xとyが交換される」を,Aにおける同値関係「x〜y」と見なす。
    Aから商集合A/〜を導出することが,「価値」の導入であった。


    商品xに対し,「xの生産に要する労働」w(x) を考える。
    そして,xがA全体を渉るときのw(x) 全体の集合をWで表す。
    x〜y に対し w(x)〜w(y) と定めると,後者の「〜」はWの同値関係になる。

    Wから W/〜 を導き,そして W/〜 を A/〜 と同一視する。
    即ち,商品xに対し,[w(x)] = [x] とする。
    こうして,労働は価値が考えられるものになる。


    そこで, 「労働wをする自分を保つために,商品x1, x2, ‥‥, xk の消費が必要」は,つぎの等式の読みである:
      [w] = [x1] + [x2] + ‥‥ + [xk]

    労働wの価値 [w] は,貨幣を記号(名前) としてもつ。
    これは <[w]>と表される。
    そこで,「労働wの賃金はn」は,つぎの等式の読みである:
        <[w]>=n



    以上示した労働価値論は,実際には無理な論であり,空論である。
    しかし,『資本論』の価値論はこの調子で進むものである。
    一般に,物から諸概念を実体的に構成しようとする論は,この種の無理をするものになる。
    実際,唯物論は,「物から諸概念を実体的に構成する」の立場を以て「唯物論」を自称しているわけである。