『資本論』の価値論は,「価値」の導出をする。
この導出方法は,数学の「商集合の導出」である。
以下に続く節では,この方法を詳しく解説する。
ここでは,この方法こそが「唯物論」なのだということを,指摘しておく。
数学の「商集合の導出」は,つぎのものである。
最初に,集合がある。
ここに,集合の要素間の同値関係を導入する。
──「同値関係」は,卑近で考える「同値」「同類」の関係を考えればよい。
ここで,同値な要素同士を,類に括る。
──類は,「同値類」と呼ばれる。
このとき,集合は,同値類に分割される。
ここで,同値類を要素にする集合を考える。
──集合は,「商集合」と呼ばれる。
いま,この「商集合の導出」をつぎのように読む:
- 最初の集合の要素を,「物」と読む
- 商集合の集合の要素を,「概念」と読む
こうして,概念は物から導出されたことになる。
そこで,「概念はすべからく,このように物から導出されたものである」の考えがもたれるかも知れない。
この考えが,「唯物論」である。
『資本論』の価値論は,商品 (物) の交換 (同値関係) から価値 (概念) を導く論である。
『資本論』の価値論は,唯物論である。
註 : |
集合論は,数学者カントールの作である。
唯物論の存在論は,畢竟,カントールの集合論の中の「集合─同値関係─商集合」である。
『資本論』の価値論──商品の交換から価値を導出──は,「集合─同値関係─商集合」であった。
「集合─同値関係─商集合」による<物から概念を導出>の最もわかりやすい例は,やはり「数」である。
これは,「<物の集まり>の集合」から出発する。
そして,<物の集まり>同士の関係として「1対1の対応がつく」を考える。
この関係は,<物の集まり>の集合の上の同値関係になる。
この同値関係で商集合をつくる。
商集合の要素を,「数」と定める。
同じ個数の<物の集まり>同士は,1対1の対応がつく。
この順序を逆転して,「1対1の対応がつく」から「個数」即ち「数」を導く。
「物 → 数」の順序にできたわけである。
唯物論者は,この「数」を自分たちの数にする。
併せて,この「数」の敵を定める。
唯物論者が「敵側の数」と定めた数は,「数え主義」の数である。
数え主義は,先に数があって,つぎに物がくる。
カントールとクロネッカーの逸話──「数え主義」に立つクロネッカーがカントールをいじめたという逸話──があって,自分たちのカントールが善玉になる配役もうまくできあがる。
そこでいよいよ,敵を倒しに戦いに出る。
「革命」がこの戦いの位置づけである。
──これは,戦後の社会主義運動において,実際に起こったことである。,
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