Up 「批判」の意味 作成: 2013-12-31
更新: 2013-12-31


    「批判」は,つぎの二通りがある:
      1. 相手と横並びする様で,相手を退けようとする
      2. 相手を俯瞰する様で,相手を定位しようとする
    例えば,マルクス主義者の中のイデオロギー対立は,Aである。
    本論考の「マルクス主義批判」は,Bである。

    Bのスタンスは,「相手を理解」「相手に寄り添う」である。
    では,なぜ「理解」と言わずに「批判」と言うか?
    「理解」の言い方には,相手を肯定するニュアンスがあるからである。
    そこで,相手を否定的に定位することになる「相手を理解」には,「批判」の言い方を用いるふうになっている。

    A, B の区別に用いた「横並び」「俯瞰」の意味は?
    「横並び」は,「同位対立」のことであり,相手の否定が自分の肯定になり相手の肯定が自分の否定になる位相である。
    「俯瞰」は,相手の否定/肯定が自分の肯定/否定に返らない位相である。

    わかりやすい喩えで,この違いを示すとしよう。
    相手が「木の幹の色は茶色だ」と言ってきた。
    つぎは,Aである:
      自分は,「木の幹の色は灰色だ」とする者である。
      そこで,「この色は茶色ではなく灰色だ」の論をつくる。
    これに対し,つぎはBである:
      自分は,「木の幹の色は何々だ」みたいな物言いをする者ではない。
      そこで,「相手は「木の幹の色は茶色だ」と唱えているが,これはどういうことか」の論をつくる:
        「相手は「木の幹の色」の概念を立てるが,これは木の幹の色がいろいろであること,色が光によって変わることを,知らないためである。」

    ちなみに,マルクス主義者は,一つのイデオロギーにつく者の癖として,マルクス主義批判を専らAタイプのものとして受け取る。
    そこで,マルクス主義に対するBタイプの批判
      「マルクス主義は「木の幹の色は茶色だ」と唱えているが,これはどういうことか」
    に対しては,つぎの形の論駁をつくる:
      「この者は,「木の幹の色」の概念がわかっていない」
    たとえば,マルクス主義者がする構造主義批判はこれであって,はなからズレているわけである。