Up 「貨幣」 作成: 2014-01-02
更新: 2014-01-02


    『資本論』は,「価値」をつぎのように定立する論である:
      集合Aとして人が交換し合う商品の集合を考え,「互いに交換される」を同値関係「〜」と見なす。
      そして,商集合A/〜 を以て「価値」を定義する。
      ──このとき,商品xに対する [x] が,「xの価値」である。
      ところで,商品xと商品yを合わせたものは,交換にのるところのまた一つの商品である。即ち,Aの要素には和「+」が定義される。
      そしてこの和は,A/〜 の要素の和,即ち価値の和を導く。
    このとき「貨幣」は,価値の記号 (名前) である。
    即ち,A/〜 の要素である価値の記号である。

    価値ξに対応する貨幣を<ξ>で表すことにする。
    商品xに対する「xの価格はn」は,式「<[x]> = n」を言い表したものである。


    貨幣<ξ>の所有は,価値ξの所有である。

     註 : 価値所有の仕方の一つに,「金(きん)」の所有がある:
      2オンスの金の所有は,価値 [2オンスの金] の所有になる。



    さて,以上示してきた「貨幣」の定立であるが,これは実際には無理である。
    即ち,交換は絶えず変動するが,『資本論』の「交換・価値・貨幣」の定立は,この変動を捨象するものになる。 そしてこの捨象で,『資本論』の「交換・価値・貨幣」の定立はまったく非現実なものになる。