Up ミスリーディング「個」 作成: 2019-07-13
更新: 2019-07-13


    存在論の論述は,存在が「個」の趣きになる。
    しかし「個」とは?

    • 岩が割れて落石。
      この石そしてもとの岩は,個か?
      割れの進行の間,個はどう見るのか?
    • プラナリアを切り刻む。
      切片のそれぞれから個体が発生。
      切り刻まれた状態のとき,個をどう見るのか?
      元の個をどう見るのか?
    • この疑問は,埋枝から個体が発生する木の場合や,株分けにも。
    • 単細胞生物が細胞分裂で増殖。
      細胞分裂のとき,個をどう見るのか?
      元の個をどう見るのか?
    • 人間の個体は,どこから始まっているのか?
      受精卵か?
      しかし,受精卵が二つに割れて一卵性双生児になるというのもある。

    上の問いは,答えられない。
    問題が難しいからではなく,もともと「個」など立つものではないからである。
    「個」は,都合で立てられるものである。
    「個」は存在に属するのではなく,認識論に属する。

    存在論は,「個」が立たないことを承知しつつ,存在を「個」の趣きで論じるのみである。
    論述はことばに依り,ことばに依るからにはこうなる。