Up 力学&系統学 作成: 2019-06-06
更新: 2019-06-06


    「科学」は,「命題論理を持つ」を含意する。
    このとき名辞が指す存在は,類である。

    類は,個別の上に同じがあるというものである。
    同じとしているものを,「形」と呼ぶ。
    翻って,形が同じ個の集合が,類である。

    科学は,形を「構造」に言い表す。
    《形が同じ》は, 《構造が同型 isomorphic》である。
    一つの類は,一つの構造と対応する。
    「内包・外延」のことばを用いて言うと,類は構造を内包とする外延であり,構造は類を外延とする内包である。


    かくして,「科学」は「類概念が<構造の同型>を枠組にして立つ」を含意する。
    立たなければ,科学でない。
    ある探求分野が科学でないことを見るには,これを規準 criterion に用いるのが簡単である。

    例えば,生物学は自然科学に属し,文化人類学は人文科学に属する。
    生物学は科学で,文化人類学は科学でない。
    両者の違いは,「集合を<生物>から<人類>へと小さくしただけ」ではないのである。
    生物学は類概念に構造を添わせるが,文化人類学は類概念に構造を添わせられない。

      文化人類学に数学の構造概念 (「群」) を持ち込み,構造主義の創始者になったのが,レヴィ=ストロース。
      しかし,説得的な論考をつくることにはならなかった。


    さて,構造は固定したものではない。
    それは時間の流れの中で,変化する。
    科学はこの変化を対象化するのに「力学」を立てる。

    この変化は, 「進化」である。
    構造は,解体と仮構を適宜用い,暫定的に立てるのみ。
    「類」は「系統」に回収されねばならない。
    こうして科学は, 「系統学」をつくる。