Up | 時空論 : 要旨 | 作成: 2019-08-29 更新: 2019-08-29 |
存在しているものは,量を現す事象である。 そして,その事象から量を現すのは,計量という行為である。 時間も,そのような量である。 時間は,自体的存在として思念するようなものではない。 <時間を現す事象>と<時間の計量>の二つを同時に実現するものが有る。 時計である。 ひとは,天然の時計を持つことができた。 地球の自転,月の公転,地球の公転である。 それぞれ,日,月,年を刻む。 時計を人工するときは,日周期の運動にすると都合がよい。 こうして,針回転の時計がつくられることになる。 ひとは,タイムスケジュールや年表といったものを作成する。 このときの時間軸の設定は,時計の設定である。 想念において,時計を設定して,ゼロからスタートさせる。 時計の針の回転が未来軸を刻み,その逆回転が過去軸を刻む。 ひとはこの時間軸に空間軸を合わせて,事象空間の枠をつくる。 事象は,「いつ・どこで」の点に布置されるようになる。 ひとはこの<時空>の枠組を,自明とするようになる。 特に,時空枠を「宇宙」スケールにまで及ぼし,こうすることに疑問を持たない。 ここに,ひとが自明にしてきた時空枠を覆す事件が起こる。 アインシュタインの特殊相対性理論の登場である。 同じ時空枠を,相対速度vの二つの慣性系でそれぞれ立てる。 このとき,一方の側から他方の時空枠を見るとき,それは自分の時空枠とはスケールが違うものになる。 ひとは時空枠を,「事象を布置する前の時空枠」の趣で,普遍的なものと考えてきた。 しかし,特殊相対性理論に拠れば,このような時間枠の概念は立たないことになる。 西洋哲学のなかのイデア論をお里とした時空論は,ここに御払箱となる。 これは,哲学的存在論の実質的終焉である。 |