Up 「パルタイ」とは何か 作成: 2020-04-15
更新: 2020-04-15


歴史を<ゴールに到達する過程>と考え,この論考を哲学に仕上げた者がいた。
ヘーゲルである。
ヘーゲルが立てたゴールは,「絶対理念」である。
この哲学を,ヘーゲルの歴史哲学という。

その後,歴史に対する<ゴールに到達する過程>の考えをそっくりもらい,ただし「絶対理念」を観念論と批判して唯物論の歴史哲学をつくる者が,現れた。
マルクスである。
マルクスが立てたゴールは,「共産制」である。
マルクスは,現体制を<共産制移行直前のいま将に崩壊しようとしている体制>と定めた。
『資本論』は,崩壊を証明しようとする論考である。


歴史を<ゴールに到達する過程>とする考えは,ヨーロッパ (キリスト教世界) 的である。
ヨーロッパの外だと,「諸行無常」とか「輪廻」,せいぜい「絶滅に向かう過程」,といった考えの方がふつうになる。

ゴール論は,「ひとはゴールに到着して救われる」論になる。
ゴール到着がずっと先のことなら,ひとはずっと救われないものになる。
そこで「ゴール=共産制」論は,修飾されることになる。
即ち,「現体制は暴力で倒すことができ,これにより共産制の実現がすぐにも成る」と。
この考え方を,マルクス主義という。
マルクス主義は,暴力革命を実践論にするイデオロギーである。

革命実践主体の前衛・中核になろうとする者が,パルタイ (党 partei) を組織する。
「共産党」である。


「マルクス主義」「共産党」は,時代の移り変わりとともに,はやらなくなるものである。
いまの時代,これは論じてもしょうがない。
一方,「パルタイ」の概念は普遍的である。
よって,これについて一項を設ける意味はある。

ひとには,「世直しの実践」を信じるタイプの者がいる。
このタイプの者のうちにさらに,「世直し実践主体の前衛・中核の組織」を信じるタイプの者がいる。
彼らが実際にその組織をつくるとき,それが「パルタイ」である。

パルタイのエネルギーは,ルサンチマンである。
パルタイは,人の世にルサンチマンがありふれている分,ありふれている。
パルタイの「世直し」は,ルサンチマンの解発 release である。
よってそれは,殺人的である。


平和な時代の最も危険なパルタイは,マスコミである。
マスコミは,ひとの知性が劣化する状況で,パルタイ化する。
ひとを善と悪に分け,悪と定めた者が十分に攻撃されるよう情報を操作し,デマゴギーを広める。
ひとのマスコミに対する認識は「正しい情報ソース」であるから,マスコミのデマゴギーには手も無くやられてしまう。
したがって最も危険なパルタイということになるのである。