Up コンプライアンス 作成: 2020-02-23
更新: 2020-02-23


    体制は,進化する。
    その進化は,一面,責任体制の進化である。
    責任体制は,《どんな事故にもそれの責任者がある》という形に進化する。
    この場合の「責任者」は,「失敗をなじられ・謝罪し・懲戒処分を受ける者」である。

    このような責任体制では,だれも責任者の立場を持ち堪えられない。
    そこで責任者のことを,「判断・指示を自分で考えて下す者」ではなく「与えられたマニュアル通りに事を運ぶ者」にする。
    事故が起きれば,「マニュアルに不足/間違いがあった」「マニュアル通りにしない者が現れた」という言い方で,マニュアルや他の者のせいにできるわけである。

    責任体制のこのような進化は,社会を規則で張り巡らすものになる。
    規則が隈無く張り巡らされたこの社会を,コンプライアンス社会という。
    この社会の員は,表向きの行動ばかりでなく,人に知られ得る行動はすべて<規則遵守の行動>に成していかねばならない。

     註: この行動様式を,昔は「官僚主義」と呼んだ。
    みなが官僚主義になったいまは,「官僚主義」は死語である。


    コンプライアンス社会の員として生きる能力は,だれもが持てるものではない。
    先ず,つぎの能力が要る:
      a. 規則が頭に入る
    そして,コンプライアンス社会の規則は,アリバイづくりのための規則,表面を取り繕う規則,当座をやり過ごす規則であるから,つぎの能力が必要になる:
      b. 規則の欺瞞性にさほど意識が向かわない

    ひとの中には,この能力のまったくダメな者が,一定割合でいる。
    運動がダメ,歌うのがダメ,絵を描くのがダメ,数学がダメ,等々と同じように,<規則がダメ>タイプの者がいるのである。